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2026年04月23日

社会

刑事事件の「再審制」見直し大詰め そもそも再審制って? なぜ見直し必要?【時事まとめ】

なぜいま「再審制見直し」なのか

 最近よくニュースで取り上げられる「再審制」について、聞いたことはありますでしょうか。刑事事件の裁判をやり直す仕組みのことを「再審制度」といいます。現在その仕組みについて見直しが進んでいますが、裁判の仕組みなどを管轄する法務省の改正案に自民党内から異論が噴出し、議論が紛糾しているのです。

 多くのみなさんにとっては直接関係のないと思われる「再審制」ですが、無罪にもかかわらず罪を着せられてしまう「冤罪」を防ぐための最後のとりでであり、国民から信頼される国であるためにはとても大切な制度です。国のあやまちで、場合によっては命まで奪われてしまう冤罪事件を防ぐために、国はいま何をどう見直そうとしているのか。基本的なことから理解して、国の動き方に対するニュース感覚を養ってください。(編集部・福井洋平)
(写真・袴田巌さんの再審開始決定に対する検察の抗告が棄却され、「再審開始」の旗をかかげる弁護士ら=2023年3月13日/写真、図版はすべて朝日新聞社)

【再審とは】「明白性」と「新規性」ある証拠が必要

 まず、再審とはそもそもなにか、基本的なところから整理します。

 再審とは、一度「有罪」と確定したあとに、裁判をやり直すことです。刑事事件の裁判の進め方などについて定めた「刑事訴訟法」に規定があります。ちなみに刑事裁判とは、殺人や強盗、窃盗、暴力事件など、刑法などに触れる罪を犯した疑いのある人(被告)を裁く裁判のことです。犯罪の疑いがある人を調べ、裁判に訴えて有罪を求めていくのは「検察」です。一方で、お金の貸し借りや離婚問題など人と人との争いを解決するのが「民事裁判」です。

 日本では、民事でも刑事でも3回裁判を受けられる「三審制」をとっています。ですが、刑事事件で有罪が確定してからも、その裁判が誤っていると思うときは、有罪の確定判決を出した裁判所に「再審」を請求することができるわけです。やり直しを求めるためには、「無罪を言い渡すべき、明らかな証拠を新たに発見した」という理由が必要になります。これは証拠の「明白性」と「新規性」と呼ばれています。請求を受けて裁判所では非公開の「再審請求審」が行われ、弁護側と検察側が主張を戦わせることになります。

 ここで再審開始が決まると、公開の「再審公判」が開かれます。ただ、「再審請求審」の段階で弁護側と検察側が十分に証拠を出して裁判所が判断を下していることから、再審では無罪となるケースがほとんどで、再審開始が事実上の「無罪宣告」となっています。

【再審制の課題】針の穴にラクダを通すより難しいとされる

 再審制は、冤罪を防ぐ最後のとりでと考えられます。しかしこれまで、再審が開かれるハードルはきわめて高く、「開かずの扉」「針の穴にラクダを通すより難しい」などと表現されてきたのです。先に書いたように日本では三審制をとっており、3回の裁判を経てさらに「新規性」「明白性」のある証拠を見つけること自体、難しいと考えられます。また、裁判官によって再審開始の可否が左右される「再審格差」もあると指摘されてきました。

 さらに、裁判所が再審の開始を決定しても、検察が高裁や最高裁に不服を申し立てられるため、決着までに何年もかかることが多くなっています。また、検察が重要な証拠をなかなか開示しない、という問題も指摘されています。

【相次ぐ再審無罪判決】不服申し立てで時間経過、証拠隠しも

 この問題がクローズアップされるようになったのが、近年相次いだ再審無罪判決です。

 特に大きな転機となったのが、いわゆる「袴田事件」です。1966年に静岡県で起きたみそ会社専務一家4人の殺人事件で逮捕、死刑判決を受けた元プロボクサーの袴田巌さんが、2度の再審請求を経て2024年に再審無罪となりました。初公判から9カ月後に突然、血のついた衣類5点がみそタンクから見つかり「犯行時の着衣」と判断されるなど捜査への疑問が指摘されていた事件ですが、2014年に静岡地裁が再審開始決定を出してから検察は不服申し立て(抗告)し、再審がはじまるまで9年もかかりました。

 また、2025年に前川彰司さんが再審無罪となった福井女子中学生殺害事件では、最初の再審開始決定が出てから再審開始が確定するまで13年近くかかっています。さらに、有罪判決の決め手になった証言の信憑性が大きく揺らぐ捜査報告書を、検察側が34年以上伏せていたことも明らかになりました。こうしたことから、再審制については検察側の動きが大きな壁となっている、とみられているのです。
(写真・「変えよう再審法」「ノーモア!えん罪」のボードを掲げる登壇者ら=2026年4月18日、東京・渋谷)

【今後の展開】抗告禁止か維持か、自民党と政府が真っ向対立

 2023年から自民党は再審制度見直しについての勉強会を始め、2024年には超党派の国会議員連盟が立ち上がりました。2025年には見直しに向けた議員立法の要綱案をまとめましたが、そこには検察の不服申し立ての禁止や、幅広い証拠開示規定などが明記されています。

 一方、政府も検討をはじめましたが、法務省がまとめた政府法案では抗告禁止は見送られ、証拠の開示範囲も限定する内容でした。自民党の部会で政府法案の事前審査が始まりましたが、党側からは強い反発の声が相次ぎました。

 議連案を中心になってまとめた自民党の井出庸生衆院議員はSNSで「抗告が短くない年数、再審開始を延ばしてきた現実があり、しかも多くは再審無罪に至っている」と指摘。元被告側が申し立てた再審請求は99%超が棄却されているとしたうえで、「1%に満たない、冤罪かどうかを確認する必要性が極めて高い事件を適正に救済したい」と訴えています。一方の法務省・検察側は、「不当な再審開始決定を是正できなくなる」として、抗告の維持を訴えている状態です。自民党側と政府、双方の言い分が真っ向からぶつかっていて、落としどころはまだ見えていないといえます。

 ここまで自民党内での議論が紛糾するのは、最近では珍しいことだとも言います。人生を大きく壊してしまう冤罪をどう防ぐべきなのか、これからも議論が積み重なっていくことを期待します。今後の進展について、ぜひ興味をもってチェックしてみてください。
(写真・再審制度を見直す政府法案を審査している自民党の会合=2026年4月13日)

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