話題のニュースを総ざらい!面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ

2026年04月03日

経済

ニデック「不正会計」創業者も辞任 不正なぜ起こる? 知識深めよう【時事まとめ】

カリスマ経営者が辞任

 企業は、ときに「不祥事」を起こします。それはどのような不祥事なのか、不祥事が起こった原因は個人の問題なのかそれとも会社全体の問題なのか、どのような再発防止策が講じられたのか――などなど、企業研究をするうえではしっかり把握して就職活動にのぞみたいところですが、なかなか企業のウェブサイトを見るだけでは全容はつかみきれないことが多いです。

 そんな時は、新聞や雑誌のニュースをチェックすることがとても有用です。自分の志望していない会社、業界の不祥事であっても、企業が起こす不祥事にはどういったものがあるのか、なぜ不祥事が起こるのかを知ることは、企業を選ぶ際の重要な判断材料になるでしょう。

 今回は、売上高2兆円を達成しているモーター大手「ニデック」(本社・京都市)の「不正会計」問題を取り上げます。カリスマ経営者として知られた創業者の永守重信氏が名誉会長を辞任する事態に発展した問題の背景に何があったのか、朝日新聞の記事をもとにまとめます。ほかにも続発している「不正会計」ニュースを理解するのにも役立つでしょう。(編集部・福井洋平)
(写真はiStock)

企業の成績を示す「決算書」 間違ったら「不正会計」

 企業は、ものやサービスを売ってお金を稼ぐ組織です。その企業がどの程度お金を稼げているのか、また、どのようにしてお金を稼いでいるのかを示したものが「決算書」(財務諸表)と呼ばれるものです。いわば会社の「成績表」のようなもので、一定期間(たいていは1年間)のあいだに得た収益とかかった費用を出してその差額を損益として示す「損益計算書」、会社の資産と負債などを示して会社の財政、財産状況をあらわす「貸借対照表」などがあります。

 日本の企業の多くは「株式会社」、つまり「株主」からお金を集めて経営が行われています。株主にとって決算書は、自分がお金を出している企業がどうお金を稼いでいるのかを知るとても重要な資料です。また、企業にお金を貸す金融機関、税金を課す税務署にとっても、決算書は大切なデータとなります。

 決算書が間違って作られることを「不正会計」と言いますが、本当は稼いでいない企業が稼いでいるように思われた結果、株主がたくさんお金を投資したり金融機関がお金を貸したりすることにつながってしまいます。決算書が正しくつくられることで、株主も金融機関も安心して投資や融資をすることができ、経済の安定した成長につながるのです。不正会計が発生しないよう、特に上場企業は監査法人という組織のチェックを受けることが義務づけられています。

ニデックは世界トップクラスのメーカー

 今回、この決算書を意図的にごまかす不正会計が多数みつかったニデックとは、どういう会社でしょうか。

 1973年に京都市で創業したニデック(2023年に日本電産から改称)は、世界トップクラスのモーターのメーカーとして知られています。ハンドル操作を補助する電動パワーステアリングやハードディスクを動かす小型のモーターなどで世界シェア1位を誇り、近年は工作機械や電気自動車用の部品なども手がけ、連結ベースの国内外の従業員数は10万人超、年間の売上高は約2兆6千億円という大企業です。

 この会社を1代で成長させたのが、創業者の永守重信氏です。「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」を信条に、営業では「絶対にNOと言わない」スタンスで臨み、1980年代はハードディスク用モーター生産で会社を急拡大に導きました。その後は企業買収にも力を入れ、カリスマ経営者としても名をとどろかせた人物です。

 2025年9月、そのニデックのグループ内で、不正な会計処理が行われた可能性が高いとして第三者委員会が設置されました。この年の7月に傘下の会社から、子会社が値引きに伴って取引先から戻ってきた2億円を適切に会計処理しなかった疑いがあると報告がありました。その件を調べる過程で、ほかのグループ企業でも不正な会計処理が疑われる資料が複数見つかり、第三者委員会設置に至ったのです。

 そして2026年3月、第三者委員会の報告がまとめられ、多岐にわたる拠点で多数の会計不正が発見されたと公表されました。調査対象は2020年以降でしたが、会計不正はそのかなり前から行われていたとのことです。
(写真・ニデック本社=京都市/朝日新聞社)

売上や資産を高くみせ、費用を低くみせる

 不正の手口はさまざまでした。たとえば、

・使うあてのない資産の減損の回避……使うあてのない資産は価値が減っているわけで、その減った分を「減損」として差し引いていく必要がありますが、それを先送りにしていました。
・人件費の資産計上……人件費は本来「費用」ですが、これを「固定資産」に計上することで、費用としての計上を先送りにしていました。
・架空の売上計上、在庫の二重計上……これにより、売上や資産を実態よりも高く見せようとしていました。

 つまり、売上や資産を高くみせ、かかった費用をできるだけ低くみせることで、実態とは違う利益があがっているように見せていた――というのです。これら不正が明るみに出たことで、追加で検討が必要となる減損損失は最大で約2500億円にのぼる可能性があると第三者委員会は指摘しました。それだけ、ウソの利益が積み上がっていた可能性があるというわけです。
(写真・ニデックの不正会計について、記者会見する第三者委員会の平尾覚委員長=2026年3月3日/朝日新聞社)

創業者の永守氏からの強いプレッシャー

 なぜこのようなことが起こったのか。第三者委員会は、「最も責めを負うべきなのは永守氏と言わざるを得ない」と、創業者である永守氏の責任を厳しく指摘しました。

 永守氏が不正を指示した事実は発見されませんでしたが、ただちに是正すべき会計不正を数年にわたって処理することを受け入れていた、と認定されています。そしてなにより、グループ内で不正がひろがった原因は永守氏が業績目標の達成に向けて強烈にプレッシャーをかけたことだ、と指摘しているのです。

 一代で会社を急拡大させた永守氏は、高い目標をかかげて役員たちに強いプレッシャーをかけてきました。目標の数字は非現実的なレベルに上がっていましたが、永守氏は目標未達を許さず、役員には「今の実績のままでは役員退任か降格人事がまっている。最悪の結果にならないことを祈っているので、死ぬ気で結果を出して欲しい」といったメールやチャットを送りつけて追い込んでいました。「強いプレッシャーをかけつつ、正しい会計を徹底するのは無理があるのでは」と進言した幹部もいたものの、永守氏は「自分ならできる」と答えたといいます。永守氏は第三者委員会が報告を公表する前の2月に名誉会長を退任。不正の中身や背景について、永守氏自身が公の場で語ることはありませんでした。
(写真・ニデック創業者の永守重信氏=2024年/朝日新聞社)

東芝も不正会計で歴代社長3人が辞任

 「成績をあげろ!」と親からプレッシャーをかけられ、ついテストの点数を書き換えてしまう――。そんなレベルの話が、大企業を舞台により巧妙で深刻な形で行われていたわけです。かつて日本を代表する家電メーカーだった東芝が上場廃止、投資ファンドによる買収にまで追い込まれたのも、今回と同じ構造の不正会計がきっかけでした。2008年のリーマン・ショックやアジア諸国の台頭で電機メーカーがこぞって大赤字となる中、東芝は無理な経営目標を「チャレンジ」と称して現場に押しつけ、2008~2014年度に計2248億円の利益を水増ししていました。これが2015年に発覚し、歴代の3社長が辞任する事態となりました。ニデックも大変な逆風のなかにいますが、これから経営をどう立て直していくかが注目されます。

 不正会計は、株主や金融機関、税務署などさまざまな関係者に悪影響をあたえ、経済活動の安定感も失わせる行為です。それにもかかわらず不正が行われる理由は担当者が自分の欲を満たすためもあれば、ニデックや東芝のように経営陣からのプレッシャーが原因となることもあります。過去の不正の例を知ることで、企業を見る目を養っていきましょう。
(写真・東芝の看板/朝日新聞社)

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