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2026年02月06日

国際

移民対策問題で国内大揉め、アメリカで何が起こっている?【時事まとめ】

移民捜査局に批判集まる

 ベネズエラ攻撃、国際機関からの大量離脱、グリーンランド領有への意欲など連日世界を揺さぶっているアメリカ・トランプ政権。いま、強硬な移民取り締まりをめぐり、国内でも騒動が広がっています。アメリカ音楽界の祭典であるグラミー賞でも、受賞者らが移民捜査局を批判する場面がありました。グローバルに仕事することが当たり前になっている現在、アメリカ国内で何が問題となり、どんな騒動が起こっているかきちんと知っておくことはとても大切なことです。基本的なことから確認していきましょう。(編集部・福井洋平)
(写真・女性が撃たれた現場には、多くの人が祈りを捧げに来ていた=2026年1月8日午後、ミネソタ州ミネアポリス/写真はすべて朝日新聞社)

【問題の発端】女性がICE捜査官に射殺される

 まず、問題の発端からみていきましょう。

 1月7日、ミネソタ州ミネアポリスで、移民を取り締まる移民税関捜査局(ICE)の捜査官が米国市民の女性に発砲。女性は死亡しました。ミネアポリスの警察署長の発表では、道路をふさいでいた車にICE捜査官が徒歩で近づいたところ、女性が車を発進。その際に捜査官が発砲したのです。

 「不法移民の大規模強制送還」を政策にかかげるトランプ政権のもと、実際に取り締まりを担っているのがICEの捜査官です。トランプ大統領はとりわけ、民主党の地盤で移民に寛容なロサンゼルスやシカゴでの移民取り締まりを強化。2025年12月からは、やはり民主党の強い地盤であるミネアポリスでのソマリア系移民の摘発に力を入れ、2千人の移民捜査官を投入する計画を発表していました。ICEに対する反発が高まっているなかで、事件は起こったのです。この女性はICEによる暴力的な取り締まりを監視し、そのターゲットとなりうる移民たちに笛を鳴らして危険を知らせるという「オブザーバー」という取り組みにボランティアとして参加していました。警察署長はこの女性はICEによる捜査対象ではなかったと発表しています。

 ミネアポリス市長やミネソタ州知事は事件に対して怒りをあらわにしましたが、ICEを管轄する国土安全保障省長官は「女性は車を武器化し、捜査官をひき殺そうとした。国内テロ行為に該当し、捜査官は防御射撃をした」と発言。トランプ大統領もSNSで「意図的に悪意をもって捜査官を車ではねた」として捜査官を擁護しました。
(写真・事件を受けて開かれた抗議集会の様子=2026年1月8日午後、ミネソタ州ミネアポリス)

【問題の拡大】5歳男子も連行され、ふたたび男性射殺も

 トランプ氏は捜査官を増やして取り締まりを強化。抗議の動きは全米に広がり、ニューヨークやロサンゼルスなどの主要都市でデモが繰り広げられました。1月20日にはミネアポリス郊外に住むエクアドル出身の5歳の男の子が移民捜査官に連行されたと報じられ、1月24日にはふたたびミネアポリス市民の男性が移民を取り締まる捜査官に射殺されます。国土安全保障省は「銃を持って近づいてきた人物から武器を取り上げようとしたところ、激しく抵抗したため、捜査官らが防御射撃をした」と説明。ミネソタ州知事はうそだと反発し、ミネソタ州から移民捜査官を撤退させることを求めました。米紙ニューヨーク・タイムズは事件の動画を分析し、男性が手に持っていたのは、銃ではなく携帯電話だったと報じています。

 ロイター通信とイプソス社が1月23~25日に実施した世論調査では、トランプ大統領の移民政策への支持率は39%に低下し、2期目就任以降で最低となりました。この展開に、政権与党である共和党内からも懸念や批判の声が出るようになります。民主党系の州や市の指導部が連邦政府の移民取り締まりに協力せず、市民の暴力をあおっていることが問題だとしてきたトランプ政権も態度を軟化。トランプ氏は1月26日にミネソタ州知事、ミネアポリス市長と電話会談し、「多くの進展があった」とSNSに投稿しました。しかし今後、取り締まりがどの程度見直されるかは未知数です。

【進む分断】暴力性増すICE、グラミー賞でも批判の声が

 ICEの行動に対する抗議はさらに広がっています。アメリカ最大の音楽の祭典であるグラミー賞の授賞式が2月1日に開催されましたが、最優秀アルバム賞を受賞したプエルトリコ出身のバッド・バニーさんはスピーチで「ICE OUT(ICEは出て行け)。私たちは動物でもエイリアンでもなく、人間でありアメリカ人」と発言。最優秀楽曲賞を受賞した米シンガー・ソングライターのビリー・アイリッシュさんは「ICE OUT」と書かれたバッジをつけて登壇し、「私たちは戦い、声を上げ、抗議し続ける必要があると感じる」と呼びかけました。トランプ氏はSNSに「グラミー賞は最悪で、 見られたものではない」と投稿し、授賞式について「ゴミ」と酷評しています。また、高まるICEへの反感を受け、ミラノ・コルティナ冬季五輪で米国の競技団体が自国の選手向けに設置した施設の名称が「アイスハウス」から「ウインターハウス」に変更されました。

 ICEなどの捜査官はマスクで顔を覆い、銃で武装し、迷彩服や防弾チョッキを着た兵士のような格好をしています。激化する抗議デモに対して彼らは暴力性を増し、至近距離から顔に催涙スプレーを噴射したり、街中で催涙ガスをまいたりする行為も相次ぎました。デモに出くわした女性が車の窓ガラスを割られ引きずり出されたり、子ども連れの家族が催涙ガスを浴びて病院に運ばれたりした事例も報じられています。
(写真・連邦政府ビルの前で、抗議活動をする市民らと相対していた当局職員ら=2026年1月8日午後、ミネソタ州ミネアポリス)

【今後どうなるのか】「敵」とみなせば国内でも激しい暴力で対抗

 ミネアポリスでは5年前にも、黒人男性が白人警官に首を圧迫されて死亡する事件があり、それを機に「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動が広がりました。市民たちの運動が人種差別からの解放を加速させるという期待がありましたが、トランプ政権の施策はそんな期待を完全に砕いたようにみえます。

 ミネアポリスで亡くなった2人の市民は捜査官に危害を加えようとしていたのか、きちんと捜査を行って何が起きたかを客観的に特定し、市民の命が奪われないよう再発防止策を考える――そんな意見も、いまのアメリカでは力を持たないようです。それどころか、国外のみならず国内に対してもトランプ政権が「敵」とみなした相手に対して激しい暴力で対抗しようとする動きが加速しているように見えます。バイデン政権の元高官は朝日新聞のインタビューに対し、「大統領が自由に『敵』『戦闘員』を指定できるとすれば、こうした権限の下、米国民も法の適正な手続きなしに拘束され、資産が接収されるようなことが起こりかねません」と指摘しています。

 アメリカの分断は、取り返しのつかないところまでいくのか、あるいはトランプ大統領が移民対応を再考するのか。アメリカという国を理解するうえで、目を離してはいけない問題と感じます。
(写真・黒人男性が殺害された現場近くに置かれている多数の「お供え物」。「暴力をやめろ」というメッセージが書かれていた=2024年5月22日、米ミネソタ州ミネアポリス)

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