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2014年10月17日

iPS細胞使い肌細胞若返り 67歳が36歳に? コーセー

化粧品・生活用品

iPS細胞使い肌細胞若返り 67歳→36歳 コーセー(10月16日朝日新聞朝刊)

 コーセーは10月15日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、67歳の日本人男性の肌の細胞を、同じ人の36歳時点の肌とほぼ同じ状態に若返らせることに成功したと発表した。同社は今回の結果を使い、老化のメカニズムを解明していく。まだ基礎研究の段階だが、将来的には、一人ひとりの肌アレルギーに対応したオーダーメード化粧品の開発にもつながるという。

【目のつけどころ】iPS細胞の新たな使い道に注目!

 心臓でも皮膚でもどんな細胞にも分化できる夢の万能細胞「iPS細胞」。この細胞を世に送り出した京都大の山中伸弥教授が2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞したことは記憶に新しいでしょう。

 うまれてまだ8年のiPS細胞ですが、今年は医療分野への応用が相次いでニュースになりました。9月12日には理化学研究所などのチームが、目の難病患者の皮膚からつくったiPS細胞を網膜の組織に変化させて患者に移植する手術を実施したと発表。その5日後、こんどは京都大などのグループが、患者からつくったiPS細胞を使い骨の難病に高脂血症治療薬「スタチン」が効く可能性があることを見つけたと公表しました。こちらのニュースは「就活ニュースペーパー」でも取り上げています。(9月19日「iPS細胞のこれから…『新薬開発」に期待」

 そして、今回のニュースです。医薬品とは縁遠そうに思える化粧品メーカーのコーセーが、iPS細胞により肌を若返らせることに成功したと発表しました。念のためですが、「iPS細胞を肌に注入すれば若返るのか!」というわけではありません。ある人から約30年間提供を受けてきた肌細胞を使い、67歳時点の肌細胞をiPS細胞にすることで36歳時点の細胞に戻せた、とのこと。直接若返りを実現するというよりも、こうして作ったiPS細胞を動物や人体での治験にかわって活用し、よりよい化粧品を生み出すのが狙いなのです。

 実はコーセーは現在、化粧品や医薬部外品については動物実験を行っていません。人のいのちや生活にかかわることならともかく、ただ美しくなりたいという欲望のために動物におおきな被害を与える実験を行うことに「NO」の姿勢を打ち出す企業は資生堂やマンダムなど、少しずつですが増えてきています。iPS細胞は、こういった動物実験廃止の流れを加速させるかもしれませんね。

 企業は営利目的だけで動いているわけではありません。就職活動をする際は、その会社の社会問題に対するスタンスについても知っていたほうが、より深い企業研究ができるでしょう。

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