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2014年08月01日

円安なのに…日銀「輸出、勢いに欠ける」

自動車・輸送用機器

日銀「輸出、勢いに欠ける」 (7月30日朝日新聞朝刊)

 日本銀行の石田浩二審議委員は29日、山口県下関市で記者会見し、企業が工場などを建てる「設備投資」の動向について「全体としては増えているが、輸出企業では増産などの能力増強投資が少なく、省力化が目的のものが多い」との見方を示した。

【目のつけどころ】 実質輸出はマイナス 海外工場、輸出先の需要の変化

 こういう記事に「あれっ?」と感じられるようになると、経済がおもしろくなるかもしれません。なぜなら、このニュースには、
「予想が覆されていますよ」
 という興味深いメッセージが隠されているからです。

 どんな予想でしょうか。はい「円安効果」です。つまり、経済関係者の多くは、
「円安になれば、輸出産業は伸びるはずだ」
 と考えていたのです。しかし、まったく増えていないことが、日本銀行の統計で浮かび上がりました。
 最新の発表である6月の実質輸出を見ると、前年同月比でマイナス2.9%。これは多くの関係者にとって、意外な数字でした。

 バークレイ証券のアナリスト北野一さんが、過去30年間の輸出データを分析しています。それによると、10%以上の円安が進んだ時期では、輸出は平均して7.7%も増加しました。ところが今回は異なりました。円安は20%を越えたにもかかわらず、輸出が減ったのですから。

 では、その理由は?
 北野さんは自動車産業で考察しています。米国向けの自動車輸出が不振になった原因について、同証券の自動車担当アナリストが挙げたのが、ホンダの具体的なケース。今年2月にメキシコで第2工場を稼働させ、人気の乗用車フィットの現地生産が始まりました。これによって、それまで日本から輸出をしていた分が減っているそうです。

 また、米国内の需要の変化も大きいとしています。たとえばライトトラック(米国で人気があるピックアップトラックなどの大型車)などは伸びていますが、乗用車はかつてのようには売れず、頭打ちになっています。
 こうした輸出先の変化によっても、円安効果は相殺されました。

 どうですか。経済は複雑で、難しいですね。でも、さまざまなニュースを組み合わせることで、「なぜ」という疑問に応えられるのも魅力です。さまざまな角度から、読み解いていきましょう。

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