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2017年08月09日

マグロ完全養殖は成長産業 水産大手が続々参入!

食品・飲料

大手商社・双日はAIで効率化

 大手商社の双日は、マグロ養殖事業で、人工知能(AI)を活用する実証実験を始めました。育てにくいマグロを効率よく育てるためにAIの力を借りようという試みです。ただ、マグロ養殖の今後を考えると、卵からの完全養殖がどのくらいのスピードで進むか、がカギになります。稚魚を獲ってきて育てるだけの養殖では、資源の減少を止めることができません。マグロ大国の日本は世界に先駆けて完全養殖を成功させていて、大手水産会社などがどんどん参入しています。2030年代になると、私たちの食卓に上るマグロのほとんどが完全養殖マグロになると予測する人もいます。マグロは高級魚だけに、大きなビジネスになる可能性を秘めています。
(2017年8月8日朝日新聞デジタル)

(写真は、近大の完全養殖マグロを使った海鮮丼=2013年3月29日撮影)

「蓄養」か「完全養殖」か

 マグロの養殖には二つのやり方があります。ひとつは「蓄養」です。海からマグロの幼魚を獲ってきて、生け簀(す)で大きくして出荷するというものです。蓄養にも、短期と長期があって、比較的大きい幼魚を獲ってきて、数カ月生け簀で大きくして出荷するものと、20~30センチの幼魚を2、3年かけて大きくして出荷する本格的蓄養があります。もうひとつのやり方は「完全養殖」です。つまり、生け簀で産卵した卵を大きくして出荷するとともに、そこで育ったマグロが産卵した卵をまた大きくするというもので、養殖場だけで完全循環することになります。
(写真は、双日が長崎県松浦市で手がけるマグロ養殖。蓄養の方法で約5万匹を育成。AIでエサの量を調整しています=同社提供)

長年かけて「近大マグロ」登場

 今は、日本の食卓に上るクロマグロの半分近くが養殖ものですが、そのうちのほとんどが蓄養ものです。完全養殖は技術的に大変難しいためまだごくわずかです。近畿大学水産研究所が水産庁の委託を受けて和歌山で完全養殖の研究を始めたのが1970年。32年後の2002年にようやく成功しました。その後、量産化のめどがついたのが2014年で「近大マグロ」の名前で出荷を始めました。2020年には30万尾を出荷する計画を進めています。マグロはとてもデリケートな魚で、卵が孵化(ふか)しても様々な要因で死んでしまいます。ひとつひとつの原因をクリアしていく知見や技術を得るのに長い時間がかかったわけです。
(写真は、東京・銀座の飲食店で提供される近大の完全養殖マグロ=2016年3月29日撮影)

完全養殖は時代の要請

 この完全養殖は時代の要請になっています。なぜなら、マグロの資源減少が深刻になっているからです。マグロの中で最も高級とされるクロマグロを見ると、太平洋クロマグロは1960年に比べて8割減になっているという調査結果があり、絶滅危惧種に指定され、漁獲割り当てが行われています。マグロの漁獲量も消費量も日本が圧倒的多いのですが、最近では中国などの消費も増えており、ますます資源の保護が危なくなっています。幼魚を獲ってきて大きくする蓄養では、資源の保護につながりません。外海と完全に切り離すことができる完全養殖を増やすことが、資源を保護しながら食卓も満たせる唯一の道なのです。
(グラフは、太平洋クロマグロの資源量。1960年から激減しています=2017年8月9日付朝日新聞朝刊に掲載)

水産大手に成長の可能性

 こうした状況をにらんで近畿大学に続いて大手水産会社が完全養殖に続々参入しています。マルハニチロは2010年に成功し、2016年から本格出荷を始めました。日本水産極洋も力を入れており、日本水産は2018年度には1万尾(500トン)を出荷すると発表しました。極洋は2017年に200トンの完全養殖マグロを出荷すると発表しています。完全養殖マグロなら、国際的にも問題になる余地はなく、中国などの消費がもっと増えても、日本から輸出できることになります。水産業界は、クロマグロの完全養殖にめどをつけ、成長の可能性が見えてきています。

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