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2017年07月26日

ライバルは「アクオス」 シャープに学ぶブランドの力

家電・総合電機

アクオスは中国企業が使用権

 ブランドはとても大切です。会社名でも商品名でも多くの人が知るようになるまでには、とても多くの月日や人材、カネがつぎ込まれています。しかも、それが品質の良さとかセンスの良さとかを表すプラスイメージのものなら、価値は計りしれません。しかし、日本の電機業界の中には、経営が悪くなった際に中国や台湾企業、国内の投資ファンドなどにブランドを売ってしまったところがたくさんあります。シャープは、「シャープ」「アクオス」といったブランド使用権を中国の家電大手に売ってしまいました。台湾企業の傘下に入ったシャープはアメリカでテレビの再販売に乗り出そうとしていますが、当面アクオスというブランドは使えません。シャープは新しいブランドを浸透させる苦労を味わい、アクオスを手放したことを後悔するかもしれません。
(2017年7月25日朝日新聞デジタル)

(写真は、シャープが3年前に発売したアクオスシリーズの大型液晶テレビ=2013年10月22日撮影)

かつては液晶テレビの代名詞

 アクオスといえば、液晶テレビの代名詞のようなブランドでした。21世紀最初の10年は、アクオスが世界のテレビ市場で先頭を走っていました。品質には定評があったため、同じ大きさの液晶テレビでもほかのメーカーのブランドより高い値段で売れていました。しかし、シャープは先を見誤り、過剰な投資をしたことから経営が傾きました。最終的には、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されるのですが、その過程で2020年末までのアクオス使用権を中国の海信集団(ハイセンス)に売ってしまいました。今はアクオスブランドの家電製品は、海信集団が作って売っています。シャープはテレビ事業に再参入するときには新ブランドを作らないといけなくなっています。
(写真は、米ラスベガスの家電見本市で、シャープブランドの製品を出すことを発表する海信集団=2016年1月6日撮影)

SANYOやTOSHIBAも

 ほかにも日本の電機メーカーが、持っていたブランドを手放した例はいくつもあります。パナソニックは、合併した三洋電機の「SANYO」ブランドを中国家電大手に売りました。音響機器やカーナビに強かったパイオニアは「Pioneer」ブランドを中国の大手家電量販店に売りました。音響機器に強かったJVCケンウッドは「JVC」ブランドを台湾企業に売りました。また、東芝は白物家電分野を中国家電大手に売り、「TOSHIBA」ブランドの冷蔵庫や洗濯機は中国企業が作って売っています。家電関係の中国企業や台湾企業は歴史が浅く、プラスイメージのブランドを自前で作り上げることは大変です。そのため、確立されている日本メーカーのブランドをお金で買うという戦略をとっているわけです。経営が悪くなった日本メーカーは背に腹は代えられないと、売却に応じています。国内のファンドや企業に売る例もあります。ソニーのパソコンの「VAIO」は、日本の投資ファンドに売り、新しい会社が「VAIO」ブランドのパソコンを作って売っています。同じソニーが持っていた音響機器の「aiwa」ブランドは、十和田オーディオという会社に売られました。
(写真は、ソニーが3年前に発売したVAIOシリーズのパソコン=2013年6月5日撮影)

ブランドの有無も就職を考える要素

 こうしたブランドの売却は電機業界に目立ちますが、経営が悪くなれば自動車業界や食品業界などでも起こりえます。積極的な事業再編のためにブランドを売る場合はいいのですが、多くの場合は一時しのぎに売っています。ただ、売るブランドがあるということは、少なくとも一時しのぎは出来るということでもあります。会社名でも商品名でも、多くの人が知っていてプラスイメージのブランドがある会社は、ない会社に比べれば耐える力があると言えます。志望企業を考える際、そうしたブランドの有無も考慮するひとつの要素だと思います。

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