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2017年07月04日

「2020年代は電気自動車の時代」日産社長が明言

自動車・輸送用機器

数年後にはEVにシフト

 日産自動車の西川広人(さいかわひろと)社長(写真)が、朝日新聞のインタビューに対し、2020年代前半に出す車種からは電気自動車(EV)での展開を前提として開発すると話しました。EVは1回の充電で走れる距離が短いことなどからまだ普及していませんが、数年後には日産ブランドの新車の多くはEVになるということになります。自動車の量産メーカーのトップがEVシフトをここまではっきり明言するのは初めてではないかと思います。「いつかは来る」と言われていたEV時代ですが、いよいよ姿を現してきました。
(2017年7月4日朝日新聞デジタル)

日産が先行したEV

 日産は2010年にEV「リーフ」を発売しました。2017年5月までに27万3000台を売りました。国内他社はハイブリッド車に力を入れ、本格的なEVは出していません。世界では、米テスラがEVメーカーとして伸びていて、年内にも販売予定のEVが37万台を超える予約を集めています。また、独フォルクスワーゲンや米GMなどもEVに力を入れています。
(写真は、日産の現行の「リーフ」)

航続距離400km水準に

 EVに力を入れるメーカーが増えている理由は、いくつかあります。まず、EVの最大のネックと言われている航続距離の短さが克服されつつあることがあります。これまでのEVは1回の充電で走れる距離が200kmに満たず、遠出には不安がありました。しかし、電池の能力が向上するなどして、9月に発売される新型リーフは400km水準になっているようです。こうなると、ガソリン車との差が小さくなり、最大の欠点があまり目立たなくなります。

自動運転時代の主役はEV

 自動運転時代に適した動力は電気だという理由もあります。今、世界の自動車メーカーは運転手のいらない時代を見据えて自動運転車の開発に力を入れています。ガソリン車やハイブリッド車でも自動運転に支障があるわけではありませんが、自動運転技術はすべて電子制御のためEVのほうが、反応がスムーズだったり、開発が簡単だったりするようです。開発の先陣を切っているグーグルが試験走行しているクルマがEVなのもそのためです。つまり、自動運転時代の主役はEVになるというのが常識になりつつあるのです。

中国がEVにシフト

 世界最大の自動車市場である中国が、EVにシフトしていることもあります。中国は大気汚染に悩まされています。自動車の排気ガスが原因の一つです。そのため、政府がEVを促進する政策をとっています。中国の自動車市場は、日本の5倍くらいですが、日本の10倍以上の人口がいる国ですから、まだ大きくなると思われます。この巨大成長市場で勝ち抜くためには、EVに力を入れる必要があるというわけです。(写真は、大気汚染でかすむ中国・北京市内の様子=2016年12月16日撮影)

自動車メーカーは激動期へ

 環境問題を抱えるガソリン車に代わる自動車としては、EVのほかにガソリンと電気の両方を使うハイブリッド車や水素を使う燃料電池車があります。しかし、ハイブリッド車はガソリンを使うことで過渡期の技術とみられています。燃料電池車は水素の扱いが難しいことや触媒に使うプラチナの値段が高いことなどから克服すべき課題がまだたくさんあります。となると、次世代車はEVという見方が固まりつつあります。日産の方針が実行されると、2020年代には一挙に転換が進む可能性があります。自動車業界を志望する人は、自動車メーカーはいよいよ激動期に入るということを頭に入れておきましょう。

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