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2017年06月27日

カルビーがフルーツ抜きの「フルグラ」新発売・・・なぜだ?

食品・飲料

“マイナスの新商品”売れるのか?

 カルビーが、人気シリアル食品「フルグラ」からドライフルーツを抜いた「マイグラ」(写真)を発売しました。食品業界では、定番人気商品のバリエーションとして香辛料とか期間限定のフルーツフレーバーとかを添加する“プラスの新商品”がほとんどです。ところが、カルビーの「マイグラ」は、原料を抜くという“マイナスの新商品”です。それでも売れるのでしょうか?
(2017年6月28日朝日新聞デジタル)

シリアルブランド売り上げ1位の「フルグラ」

 「フルグラ」は1991年発売でカルビーの登録商標です。オーツ麦やライ麦などの穀類に糖類、植物油などを混ぜあわせオーブンで焼き上げたシリアル食品のことを「グラノーラ」といいます。そこに、イチゴ、リンゴ、パパイヤ、レーズン、かぼちゃのタネなどを混ぜ合わせたのがフルーツグラノーラ、略して「フルグラ」。食物繊維や鉄分などが多く塩分は少な目で、健康志向の朝食によいと人気です。フルーツグラノーラは他の食品メーカー数社からも出ていますが、カルビーのニュースリリースでは「フルグラ」がシリアルブランド売り上げ1位(2016年)と報告されています。

期間限定商品を次々出す理由は?

 スナック菓子やカップ麺などの定番商品には、期間限定商品や変わった風味をつけたバリエーションがよくあります。マーケティングの専門家によると、それらの新商品は開発費や宣伝費がかかりますが、数量からいえばそんなに儲かる商品ではありません。でも、目先が変わった新商品を次々に出すことで消費者をたえず振り向かせることができます。そうすることで新商品の元である定番商品を思い出させ、「やっぱり、あれだよね」と、戻ってきてもらう作戦だというのです。新商品単体ではたとえ赤字でも、定番商品の売れ行きを支える刺激剤になってくれさえすれば、メーカーとしては作戦成功というわけです。
(写真は、カップ麺のバリエーション例。「カップヌードルそうめん鯛だし柚子風味」=日清食品提供)

フルーツ抜きの「フルグラ」望む消費者の声

 マイグラの発想は少し違うようです。冒頭の記事によると「カルビーのお客様相談室には、1週間に1件のペースで『グラノーラだけのフルグラを販売して』という要望が来ていたという」とあります。レーズン嫌いの子どもが、それをどけて食べていたとか、歯にドライフルーツがくっついて銀歯が取れそうになったというような理由です。同社の調査で、「フルグラを知っているけど買わない」と答えた人は全体の4分の1あり、そのうち「ドライフルーツが嫌いだから買わない」人が22.4%と、買わない理由の第1位だったそうです。
 では、フルーツ抜きにしたらどうなったか。マイグラ購入者についてのアンケートでは、購入理由の第1位がやはり「ドライフルーツが入っていないから」(55.8%)でした。

フルグラ好きも、そうでない人も、みんな“お客さま”

 これまであまり聞いたことがない“マイナスの新商品”のマイグラ誕生の背景には、こんな消費者動向のエビデンス(証拠・根拠)があったのですね。フルグラは2010年に年31億円だった売り上げが今年は10倍になる見通しです。マイグラの今年度の売り上げを、カルビーはざっと10億円と見込んでいます。カルビーは、フルグラを好きな人も、そうでない人も、みんな“お客さま”にしてしまおうというわけです。
 食品メーカーの採用選考では、エントリーシートやグループディスカッションなどで、新商品開発の課題を出すところがあります。こんな逆転の発想も大いに参考にしてみてください。

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