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2017年06月20日

食品業界のグローバル化に必須「ハラール認証」って?

食品・飲料

インスタント麺から豚の成分

 インドネシアで販売されている韓国メーカーのインスタント麺「辛ラーメン」の一部から、原材料として未表示だった豚由来の成分が検出されたとして、同国の国家食品医薬品監督局(BPOM)が18日、4商品の販売許可を取り消したと発表しました。インドネシアは国民の9割がイスラム教徒です。イスラム教では、豚肉は食べてはいけないことになっています。世界の食品メーカーは、イスラム教国で販売する食品には豚由来の成分が入らないように気をつけています。それでも見つかって問題になることがあります。宗教への認識をいっそう深めないといけない、と気づかせてくれます。
(2017年6月20日朝日新聞デジタル)
(写真は、日本で売られている「辛ラーメン」ブランド。やみつきになる辛さが人気の秘密)

「ハラール認証」で安心

 イスラム教の戒律では、豚肉やアルコールを飲食してはいけません。豚肉やアルコールの成分が入った調味料も使ってはいけません。また、豚以外の食肉は処理方法が定められています。こうした戒律に沿った食べ物や化粧品などを「ハラール」と言います。アラビア語で「許された」という意味です。日本も含めた世界各国にハラールの認証団体があり、ハラール認証をとると、イスラム教徒も安心して飲食したり使ったりできることになります。
(写真は、日本で売られているチーズケーキに貼られたハラール認証マーク)

味の素が禁忌に触れて逮捕

 かつて日本の食品メーカーもインドネシアで豚肉の禁忌に触れ、製品の回収に追い込まれたことがあります。2001年、味の素のインドネシア法人が現地工場でうまみ調味料を製造する過程で豚から抽出した酵素を使っていたとして、日本人役員を含む社員6人が逮捕されました。このうまみ調味料はハラール認証を取得しており、製品には豚由来の成分は入っていませんでしたが、それでも製造過程で豚由来の酵素を使っていたことが問題とされ、消費者の怒りを買いました。味の素はインドネシアで販売しているすべての製品を回収し、製法も豚由来の成分を使わない新しいものにして、事態は収束しました。
(写真は、インドネシアの首都ジャカルタにあるイスティクラル・モスク。東南アジアで最大級)

インスタント麺は「主食」

 今回の辛ラーメンのケースは、豚由来の成分が食品そのものに入っていた点で、味の素のケースより深刻だと言えます。韓国企業3社の4商品は、「豚入り」の表示のないまま数年前から売られていました。しかも、インスタント麺はインドネシアで年間130億食も食べられる「主食」といってもいい存在です。韓国企業への影響がどのくらいになるかはまだ分かりませんが、インドネシアでは豚肉はアルコール以上に敏感な禁忌となっており、韓国のインスタント麺全体に影響が広がる可能性もあります。

グローバル社会で違いを知る

 企業活動は、急速にグローバル化しています。しかし、国境が低くなっても、国や地域ごとに文化や宗教は違います。イスラム教は女性が肌を露出することに厳しい目を向けます。ヒンドゥー教は牛を神聖なものとしてあがめます。ユダヤ教では安息日に労働することは許されません。書けばきりがありませんが、宗教だけでなく、歴史認識など文化的な違いも知っておかなければいけません。思わぬ摩擦の原因になることがあります。グローバル社会は、逆に世界の人々の違いを知る社会だと考えましょう。

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