業界研究ニュース 略歴

2017年05月02日

ネット業界が取り組む記事の「信頼」

通信・インターネット関連

グノシーが「釣り記事」排除へ

 ネット記事の信頼性が問題になっています。アメリカ大統領選では、虚偽の事実をニュース仕立てにした「フェイクニュース」が選挙結果を左右したと言われ、その対策がネット業界の課題になっています。また日本では、ディー・エヌ・エー(DeNA)が、外部筆者らの記事を集めた「キュレーションサイト」の不正確さを指摘され、サイトの公開中止に追い込まれました。こうした問題を受けて、ニュースアプリを運営するグノシーは、中身は乏しいのに見出しだけでクリックさせようとする「釣り記事」を排除するため、記事ごとに読者に評価してもらう仕組みを導入することにしました。
(2017年4月27日朝日新聞デジタル)
(写真は、グノシーのアイコンです)

読者に評価してもらう

 グノシーは新聞社やネットメディアから1日数千本の記事の提供を受けています。掲載する記事は人工知能(AI)が決めますが、見出しは提供したメディアがつけたものを使っています。ただ、この中には中身は乏しいのに興味を引くような見出しをつけた記事もあります。人工知能にはまだこうした釣り記事を排除する能力はありません。このため、6月から読者に「満足している」「気に入らない」などの評価をしてもらうことにしました。そうした評価と最後まで読まれた割合などをもとに排除する記事を決めるのです。将来的には、人工知能が「釣り記事」を最初から排除できるようにする考えです。

掲載するニュースには責任

 グノシーは、ニュースメディアをうたっていますので、提供された記事でも掲載するニュースには責任が発生します。不正確な記事や中身の乏しい記事が横行すると、一時的なクリック数は増えても、少し長い目で見れば信頼が落ち、生き残れません。釣り記事の排除が、メディアとしての生命線になるとの危機感があるものと思われます。

プラットフォーマーに責任は?

 より悩ましいのは、プラットフォームといわれるサイトや SNS です。両方とも、あくまで利用者が交流する場を貸しているという建前ですから、「そこで流されるニュースには責任は持たない」というのがこれまでのスタンスでした。DeNAのキュレーションサイトはこの建前をとっていましたが、実際には外部ライターに執筆依頼し、他サイトの記事を無断でコピペしてつなぎ合わせるなどしてクリック数が増えるような記事を書かせていたことが判明し、悪質だと言われました。
(写真は、DeNAが作っていた独自の記事書き換えマニュアルです)

フェイスブックは通報システム

 世界的にこの問題に取り組んでいるのがフェイスブックとグーグルです。フェイスブックもグーグルも「当社はプラットフォームでありメディアではありません」として、そこで流れるニュースに関して責任は持てないというスタンスでした。しかし、フェイクニュース問題を受けて、そうはいっておられず対策に乗り出しています。フェイスブックは利用者が怪しいニュースを通報できる仕組みを作り、第三者機関と提携して真偽がはっきりしないものについては警告表示することにしました。グーグルも第三者機関と協力してニュースの審議を表示する「ファクトチェック」を始めると発表しました。
(図表は、フェイスブックで流れて反響が大きかった米大統領選のニュース例です=2017年4月29日朝日新聞朝刊掲載)

日本でも協議会

 日本でもネットメディアやプラットフォーム企業がネット上の偽ニュース対策に取り組む協議会を設立します。真偽が疑わしい記事を共有して注意喚起を図る仕組みなどを作り、ネットニュースの信頼性向上を図ります。ネットメディアは、取材記者はほとんどいなくて、ネット上のニュースをまとめたり、少し手を加えたりしてつくっているところがほとんどです。新聞社など既存のメディアだと、記者、編集者、整理記者、編集長、校閲といった役割の人たちによる多段階のチェック機能がありますが、ネットメディアはチェックが機能する仕組みになっていません。ネットメディアの影響力が大きくなった今、チェック機能を充実させ、社会の信頼を勝ち得ることが必要になっています。

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