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2016年12月06日

電力業界も大再編時代?

エネルギー

東電の実質国有化、延長へ 原発事故処理費は20兆円超

 経済産業省は、東京電力ホールディングスの実質国有化が長引く見通しを示しました。事故を起こした福島第一原子力発電所=写真=の廃炉や賠償費が想定より大幅に増え、20兆円超に膨らみそうになったためで、収束が見通せるまで関与を続けます。東電としては何とか早く自立を果たしたいところで、原子力発電部門を切り出して他の電力会社と統合するなどの再編に踏み出す可能性が強まっています。

(2016年12月6日朝日新聞デジタル)

事故処理総額は20兆円超に

 東電は、事故処理や賠償などの費用を自前で払えないため、国の認可法人が50%超の株を持って、資金面で助けています。当初は、今年度末に自立できると判断すれば、国の保有比率を下げて脱国有化に向かうことにしていました。

 しかし、事故処理費の見通しを計算し直すと、廃炉費や賠償費が大幅に増えることが分かりました。11兆円としてきた費用総額が20兆円超になりそうなのです。これでは東電は自立できないとして、今のまま国が半分以上の株を持ち続けることにしたのです。

柏崎刈羽原発の再稼働を切望

 ただ、東電としては、いつまでも国が経営に関わってほしくはありません。自由な経営ができにくいためで、民間企業としては当然の考え方でしょう。

 そのためには、自立できるようになることが必要で、東電は新潟県にある柏崎刈羽原発を再稼働させて収益を増やしたいのです。ただ、10月にあった新潟県知事選挙では、再稼働に慎重な米山隆一氏が当選しました。

(写真は、県議会で答弁する米山知事。再稼働については「事故原因などの検証が必要」と発言しています)

東電は「よそ者」の面も

 再稼働が難しい状況を打ち破るために、原子力部門を他社と統合する案が語られています。新潟県民の反発を、事故を起こした東京電力への反発だとみると、東京電力が後ろに引っ込めば空気が変わるのではないか、というわけです。

 消費者からみると、新潟県は東北電力の管内です。新潟県民にとって、東電は「よそ者」という面があります。「よそ者」であれば、原発が動かなくて電気代が上がろうが、東電の国有化が続こうが関係ありません。
 しかし、例えばもし東北電力と統合すれば、県民にとっては消費者としての問題にもなります。そう甘くはないと思いますが、そんな風に考える人がいてもおかしくありません。

安定の時代は終わり

 電力業界は、2020年から発電と送電を切り離して別会社にする「発送電分離」が始まります。これに原子力部門の分離再編も並行して動くとなると、東電は、発電会社、原子力会社、送電会社、小売り会社に分かれ、それぞれが再編相手を探す形になる可能性があります。

 長く「安定の代名詞」だった電力会社ですが、いよいよ大再編時代に入るのかもしれません。安定を求めて電力業界を志望する時代は終わりました。激動にやりがいを覚える人が向いていると思います。

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