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2016年11月01日

読めぬ廃炉費用、競争激化・・・電力業界に逆風

エネルギー

大手10社は経常黒字 値下げで9社は減収

 大手電力10社の2016年9月中間決算が出そろいました。減収減益の会社が多かったのですが、経常赤字の会社はありませんでした。ただ、経営の先行きは不透明です。原子力発電所の再稼働は見通しがつかないところが多く、新電力の参入により競争は激しくなります。特に、東京電力は福島第一原発の廃炉費用が想定をはるかに超えそうで、今のままの経営形態でやっていけるかどうかわかりません。
(2016年11月1日朝日新聞デジタル)

廃炉費用を自前で出せるのか

 電力業界の先行きを不透明にさせているのは、最大の電力会社である東京電力の先行きが見えないためです。東京電力は、福島第一原発の廃炉にかかる費用を捻出しようとしています。しかし、溶け落ちた核燃料がどこにどのくらいあるかもまだわからず、きれいな更地にするまで何十年とかかるのは間違いありません。かかる費用も、現在は年800億円とみていますが、経済産業省の専門家委員会は数千億円に拡大する可能性があるとしています。毎年の利益からこれほどの費用を出し続けることは極めて難しいと考えられます。
(写真は、廃炉作業が進む福島第一原発です)

電力自由化も逆風

 逆風はほかにもあります。電力自由化です。4月から家庭用電力が自由化され、新しい電力会社がたくさん参入してきました。新電力に切り替えた家庭は全国でまだ3%ほどですが、これから徐々に増えていくものとみられています。2020年には発電会社と送電会社が分けられることになっており(発送電分離)、競争がほぼ完全に公平になりますので、新電力に大きく動くとみられています。東京電力としては、そうなる前に新潟県にある柏崎刈羽原発を再稼働させ利益を上げて体力をつけておきたいところですが、再稼働に慎重な米山隆一氏が知事に選ばれたためそのシナリオも崩れています。

原子力事業を分社化する案も

 このままでは東京電力は今の形のままやっていくことが難しくなるかもしれません。経産省はすでに、福島第一原発の廃炉作業を除く原子力事業を分社化する案を出しています。切り離すことで、ほかの電力会社の原子力事業と再編することがたやすくなると考えているようです。また、廃炉費用を自前で出せなくなり、税金が使われることになれば、経営の責任論が再び出るでしょう。その場合、会社のあり方の抜本的な見直しにつながる可能性があります。

「殿様」から状況一変

 ほかの電力会社は、こうした東京電力の先行きをにらみながら、競争の時代を生き抜く策を考える必要があります。東京電力の動向は、業界全体の動向とも密接にかかわってきます。東日本大震災までは、「地域の殿様」とまで言われた電力会社ですが、状況は一変しています。

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