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2016年10月14日

和装の「さが美」のTOB、ようやく決着

流通

着物のさが美、TOB完了 投資ファンドが買収合戦

 流通大手のユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は、傘下の着物販売全国チェーン「さが美」をTOB(公開株買い付け)という方法を使って売却しました。買ったのは投資ファンドのアスパラントグループ。他のファンドも高額の株買い取り提案を出しており、ひと悶着(もんちゃく)の末の決着です。

(2016年10月12日朝日新聞デジタル)

そもそもTOBって?

 TOBは、Take-over bidの略。ある会社の株を、株式市場を通さず買い付けの期間や規模、価格を公表し、不特定多数の株主から買い付けることです。第三者が、ある企業の株を多く買って経営権を握りたい時に、よく使う方法です。

 TOBをする側は、株を買う価格を、株式市場での価格より高くします。株を持っている多くの人は、「株式市場で普通に売るより得なので、チャンス」と考えるので、一気に大量の株を買える可能性が高くなります。
 
 また、株式市場では株価は日々動きますが、TOBでは、事前に宣言した価格で買えるので、買収のための費用の計画が立てやすいメリットもあります。

 アスパラントは1株当たり56円、総額12億円で買い取ったそうです。公開買い付けの締め切りが11日でした。ユニー・ファミリーマートHDは9月に、ファミリーマートと、東海地区を中心にスーパーを展開するユニーが経営統合した流通グループ。さが美は旧ユニー傘下にあり、ここ数年、赤字続きでした。

 ユニーは、さが美に対する債権を一部放棄し、さが美を買った会社の負担を少なくするという条件も付けていました。

横やりを入れたニューホライズン

 このTOBを巡っては、別の投資ファンドのニューホライズンキャピタルが、1株当たり90円と、アスパラントを上回る額を提示していました。

 ニューホライズンがアスパラントを上回る提示(当初報道は1株当り70円。のちに増額)をして買収提案したという一部新聞報道があり、一時、さが美株がストップ高になるほどでした。ふつうなら、高い方に決着しそうなものなのですが……。

アスパラント選んだユニー・ファミリーマート

 ところが、ニューホライズンの提案は蹴られました。

 10月11日付けのユニー・ファミリーマートHDのニュースリリースによると、アスパラントのTOB締め切りのこの日までニューホライズンのTOBが開始されず、このファンドとさが美の経営陣との間で十分な信頼関係が構築されていないことを理由に、アスパラントに軍配を上げました。敵対したり手を結んだり、TOBをめぐって、さまざまな攻防があったのでしょう。

背景にユニー・ファミマの赤字

 さが美のTOBが完了したのと同じ12日付けの朝日新聞デジタルに、「コンビニ統一が急務 ユニー・ファミマ、806億円赤字 8月中間決算」の記事が載りました。

 ユニー・ファミリーマートHDの9月統合後初の中間決算の純損益が806億円もの赤字だったのです。旧ファミリーマートは106億円の黒字を確保できたのに対し、旧ユニーは912億円の純損失を出しました。

 旧ユニーの経営の足を引っ張っていたひとつが、さが美でした。さが美のTOBに踏み切った背景には、ファミマとの経営統合があったというわけです。TOBなんて耳慣れない金融用語と思われるかもしれませんが、企業に就職するみなさんにとって、他人事ではありません。

(写真は2015年5月、経営統合に合意し、握手する当時のファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスの社長です)

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