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2016年06月28日

アマゾンの電子書籍読み放題サービス開始で出版業界ピンチに?

マスコミ・出版・印刷

電子書籍、アマゾンが定額読み放題に(2016年6月28日朝日新聞朝刊)

 通販大手のアマゾンジャパンが、電子書籍を定額で読み放題とする米国でのサービスを日本でも始めることがわかった。アマゾンで電子書籍を提供している複数の出版社が、サービスに同意したことを認めた。出版不況が続く業界内では、読者が作品に接する機会を拡大できるとの期待もあるが、紙の書籍が売れなくなることへの懸念も強い。

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 月に一定のお金を払うとコンテンツが使い放題になるという「無制限」サービスが広がっています。音楽だと昨年、「AWA」「LINEミュージック」「アップルミュージック」「Google Playミュージック」などのサービスが続々始まりました。書籍読み放題サービスはこれまで日本でも雑誌やコミックに絞ったサービスのほか、月額400円(税抜)の「Yahoo!ブックストア」や月額562円(税抜)の「ブックパス」(auユーザー向け)など一般書籍に範囲を広げたサービスも出てきています。そこにいよいよアマゾンが本格参入する、というわけです。すでにアメリカでは2014年、月額9.99ドルで電子書籍とオーディオブックが読み放題になる「Kindle Unlimited」というサービスがスタートしています。

読み放題サービスで市場は拡大する?

 出版市場は急激に縮小しています。2000年に約2兆4000億円あった売り上げは2014年には1兆6000億円と3分の2に、書店数も2003年の2万店→2013年の1万5000店と10年間で4分の3に減りました。一方、電子書籍市場は2010年度の650億円から2014年度には1400億円に倍増するなど順調に伸びていますが、市場の縮小をカバーするには一桁足りません。「読み放題」サービスは、この電子書籍市場規模を拡大させる起爆剤となりうる一方、既存の紙市場にとっては脅威となる可能性も秘めているのです。

コミックスはどうなる?

 コンテンツを提供する出版社からすると、記事中のコメントにもあるように売り上げ減少が顕著な文芸書などは多くの読者の目に触れる可能性が高まり、ジャンル復興のきっかけになるかもしれません。一方で、1冊あたりの利益は紙の本はもちろん、ばら売りしている電子書籍よりも格段に減ることになります。いま電子書籍の売り上げの大半はコミックスがあげていますが、これは紙の本でもかなりの売り上げを占めているので、読み放題サービスにコミックス読者が流れることはできれば阻止したいところです。記事でも、コミックスに関してはシリーズの1巻だけ、とした会社が多いとありますね。

古いコンテンツ読ませる工夫が必要

 読み放題サービスを出版業界にとっての追い風とするためには、過去の作品も含めた豊富な文字コンテンツの魅力をうまくユーザーに伝えて読書習慣をつけてもらう必要があります。どんな時に人は本を読むのか、どんな本が人のニーズにあてはまるのか。いままで以上に真剣に考え知恵を絞った出版社だけが生き残る時代が、すぐそこまで来ていると感じます。

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