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2016年04月22日

米ヤフー売却の“目玉”に日本のライセンス使用料?

通信・インターネット関連

米ヤフー売却、ベライゾン最有力か(2016年4月19日朝日新聞デジタル)

 米ヤフーが進めているネット事業などの売却手続きが入札期限を迎えた。米メディアは米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズが最有力候補と報じている。米メディアによると約40社が入札を検討したとみられる。ベライゾンの成長戦略に見合うとの見方が多く、幹部が一貫して買収に意欲的な発言をしてきた。ウォールストリート・ジャーナル紙は「ヤフーの日本の宝が入札争いに一役」などと報じた。米ヤフーは日本のヤフーから毎年売上の3%のライセンス使用料を得ており、これも買い手にとって魅力、との見方もある。

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 ヤフージャパンの年間売上高は約3862億円(2014年3月期)。その3%のライセンス料となると、単純計算しても115億円となります。ヤフージャパンは、1996年に日本のソフトバンクと米国ヤフーの合弁で発足しました。米ヤフーは、ソフトバンクの36.4%に次ぐ35.5%の株式を保有する大株主です。株の配当のほかに労せずして100億円超のお金が入るわけです。

 商標権(トレードマーク)をもつ者はそれを独占的に使えるほか、だれかにそれを使わせることもできます。その際、「トレードマークを使わせてください」という事業者(ライセンシー)と許諾者(ライセンサー)がライセンス契約を結び、ライセンサーはトレードマークを使わせる対価としてライセンシーからロイヤリティー(使用料)を手にします。

 最近、ライセンス契約をめぐる経済ニュースが目に付きます。当欄の「うがい薬の『カバくん』誰のもの?明治vs.塩野義」(2016年2月12日)も、パッケージやCMに登場する「カバくん」のキャラクター使用をめぐる争いでした。元はといえば、うがい薬イソジンのライセンスをもつ米製薬会社ムンディファーマが明治とのイソジンのライセンス契約を破棄し、塩野義に乗り換えたことが発端です。今年2月には、山崎製パンと世界的菓子メーカーの間でライセンス契約が切れるため、おなじみのクラッカー「リッツ」「プレミアム」、クッキーの「オレオ」「チップスアホイ」の4製品の製造を今年8月末で終えるという発表がありました(朝日新聞2月13日付朝刊)。製造販売してきた山崎製パンの子会社「ヤマザキナビスコ」は「ヤマザキビスケット」に社名変更、影響はサッカーにも及び、Jリーグのヤマザキナビスコ杯の名称変更も取り沙汰されています。

 イソジンもナビスコも半世紀以上親しまれたトレードマークですが、じつは、いまをときめくセブン-イレブンも、もとはといえばイトーヨーカ堂が1978年、権利をもつ米国サウスランド社とライセンス契約を結びヨークセブン(現セブン-イレブン・ジャパン)を設立したのが始まり。日米間のライセンス契約がコンビニエンスストアという新しい業態を日本に持ち込んだのです。この契約に奔走したのが、このほどセブン&アイの会長退任を表明した鈴木敏文氏でした。当時からライセンス料が日本から米国に支払われていましたが、本家サウスランド社の経営が傾き、1991年に日本側が本家の株を取得して子会社化したので、“主客逆転”しました。ライセンス契約や著作権など権利関係をめぐるビジネスは、グローバル化を迎え、権利を守るにしても権利をもとに攻めるにしても、企業の業績を大きく左右しかねないため、ますます重みを増しています。ライツ管理部や著作権センターなど、権利関係を扱う専門部署をおく会社も増えています。ぜひ権利ビジネスに注目してください。

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