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2016年03月24日

岩手・花巻の“名所”マルカン百貨店、救世主に名乗りを上げたのは誰?

建設・不動産・住宅

マルカンの運営継続、「花巻家守舎」名乗り(2016年3月21日朝日新聞岩手県版)

 老朽化と耐震診断不適合で6月に閉店を決めた岩手県花巻市のマルカン百貨店の運営引き継ぎに、同市のまちづくり会社「花巻家守舎(はなまきやもりしゃ)」が名乗りを上げた。同社の小友康広(おともやすひろ)代表取締役社長は「マルカン百貨店は花巻を代表する場所。役立ちたいという同志に加わってもらい、事業を進めたい」と話した。

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 花巻家守舎は、小友社長が代表取締役CEOを務める木材店の所有するビル(地下1階、地上4階。築50年超)を、シェアオフィスやカフェ兼居酒屋が入るテナントビルとして生まれ変わらせた実績があるそうです。市街地の借り手がつかない老朽ビルのような遊休不動産を国や自治体からの補助金を頼らずリノベーションして、そこをテコにエリアの価値を高め活性化させようというのが「家守舎」のアイデア。建築・都市・地域再生プロデューサーの清水義次さんがリノベーションの新しい手法として提唱し、2012年に北九州家守舎が、2015年に花巻家守舎が設立されています。

 マルカン百貨店は1977(昭和52)年設立で、店舗ビルは地下1階、地上8階。市内を一望できる食堂は、特大ソフトクリーム(岩手県観光ポータルサイト「いわての旅」)はじめ多彩なメニューとともに人気があります。「なんとか存続してほしい」という花巻市民の声は多く、閉店を報じた3月7日朝日新聞岩手版の記事では花巻市長が「世代を超えて市民が家族ぐるみで親しみ、広く愛されてきた百貨店が閉店することは極めて残念」というコメントを出しています。市によると昨年秋ごろに耐震診断で改修が必要と分かり、改修費助成などの支援策により営業継続の可能性を協議してきたが、マルカン側は営業継続は困難という判断にいたったそうです。

 花巻家守舎の小友社長は1983年生まれ。花巻で111年続く老舗・小友木材店の4代目です。明治大学を卒業後、すぐには地元に戻らず東京・新宿区のIT企業に就職、いまも系列で電子ブックなどを手掛ける子会社の取締役です。3代目の父の病気が見つかり店を継ぐことになりましたが、東京の会社から慰留され、そちらも辞めず結局「1年のうち半年は花巻、あとの半年は東京」という働き方を続けてきたそうです(小友木材店のブログなどによる)。そしていまは木材業でのITの積極活用を考えつつ、花巻家守舎の事業も展開中。マルカンビルのリノベーションは数億円の初期投資が必要で、コストと営業利益の見積もりによっては継続は困難との結論もあり、存続への道は平坦ではないそうです。そんな難事業にも果敢に挑戦する小友さんの八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍は、ひとにはいろいろな働き方、社会への貢献の仕方があるのだということを改めて気づかせてくれます。みなさんもさまざまな可能性に挑戦してください。

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