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2016年02月19日

東洋ゴムが過去最高益? 「営業利益」と「純利益」の違い学ぼう

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タイヤ大手2社、営業益最高(2016年2月18日朝日新聞朝刊)

 タイヤ大手4社の2015年12月期通期の決算が17日出そろい、ブリヂストンと東洋ゴム工業の営業利益が過去最高となった。北米での販売増に加え、原油や天然ゴムなどの原材料価格の下落と円安による採算改善が追い風になった。
 ブリヂストンは、原材料安と円安が営業利益を約1760億円押し上げ、タイヤの販売価格下落などの影響(約1400億円)を吸収。稼ぎ頭の米州部門の営業利益は2225億円と前期より2割強伸びた。

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 みなさんがふだん目にしたり使ったりすることが多いタイヤ業界の決算に関するニュースです。決算のまとめについては16日の今日の朝刊「ビール業界、海外展開での『勝ち組』を決算で知ろう!」でも触れた通り、業界研究をするうえでは欠かせない宝の山です。志望者は特にしっかりチェックしておきましょう。

 この記事によれば、ブリヂストンと東洋ゴムの2社の「営業利益」が過去最高になったそうです。営業利益とは本業でのもうけをあらわす数値で、売上高から材料費などの原価、販売費などを引いたものです。ともに北米市場の伸びと円安が追い風となりました。東洋ゴムは主力のスポーツ用多目的車(SUV)向け大型タイヤが北米で受け入れられ、北米にあるタイヤ製造子会社の製造能力は10年間で6倍近くに伸びました。欧州でもSUV用の新商品を投入するなど海外で積極的に売り上げを伸ばし、約634億円(前期比33%増)という営業利益に結びつけたのです。

 さて、この東洋ゴムという会社名、どこかで耳にしたことはありませんか? そうです、マンションなどの基礎部分に使われ地震による揺れをおさえる「免震ゴム」の性能偽装を起こした会社です。1996年以降、154棟に性能偽装のゴムを使い、これらの交換費用などがかさみ、損失額は466億円にのぼりました。そのほかにも電車などに使う防振ゴムでも性能を偽装しており、こちらの損失はまだ精査されていません。

 こういった不祥事などにともなう損失は「特別損失」といって、営業利益とは別に計上されるのです。そのため、営業利益は過去最高、という報道になったのですね。特別損失なども織り込んだ最終的な損益は「純損益」(黒字の場合は「純利益」)と言いますが、東洋ゴムの純利益は前期からなんと94.6%減の16億円にまで落ち込みました。3割増の営業利益をほとんど食い尽くしてしまったわけですね。

 東芝の例を見るまでもなく、企業における不祥事は企業経営をガタガタにしてしまいます。今回の決算を通じ、数字でも不祥事の恐ろしさをしっかりと理解しましょう。

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