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2016年02月12日

うがい薬の「カバくん」誰のもの? 明治vs.塩野義

医薬品・医療機器・医療機関

うがい薬デザイン「似ている」使用差し止め仮処分申請(2016年2月10日朝日新聞朝刊)

 食品大手の明治は、塩野義製薬の子会社と米系のムンディファーマの2社が4月に発売予定のうがい薬のパッケージに、明治のうがい薬にある「カバくん」と似たキャラクターが付いているとして、不正競争防止法に基づきこのデザインを使わないよう求める仮処分申請を東京地裁にした。

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 インフルエンザの季節ですね。予防に心がけましょう。うがい薬といえば、イソジンを思い浮かべる方もいるのでは。あの、ちょっと苦くて茶色の液体です。イソジンは、記事に登場するムンディファーマが開発した殺菌成分を使う医薬品のブランド名です。「人の体液と同じ浸透圧(isotonic)で人体にやさしく、ヨウ素(iodine)入りでよく効く。二つの特長をあわせて『isodine(イソジン)』と命名」したといいます(「キミの名は イソジン」朝日新聞2009年9月12日付による)。ムンディと提携した明治製菓が1961年から一般医用品のうがい薬として発売しました。カバくんは1985年からテレビCMに登場し、大きな口を開けてがらがらうがいする名物キャラです。

 なぜ、そんな「カバくん」をめぐる争いがおきたかというと、ムンディがイソジン(ムンディファーマの登録商標)についての明治との販売提携を解除し、新たな国内販売のパートナーとして塩野義を選んだからです。カバくんは明治が販売戦略上、作ったキャラ。イソジンの販売権は塩野義側に移りましたが、カバくんは明治に残り、4月から明治が販売するうがい薬(成分や効果等は「イソジン」とほぼ同じもの)に起用されることになっているとのこと。薬の特許権は切れても商標の権利は更新できないため、同様のうがい薬は作れても「イソジン」は名乗れません。しかし、30年あまりかけて全国に浸透したカバくんのキャラは、両者にとって捨てがたい存在だったのでしょう。

 それにしても、なぜムンディは明治と切れて塩野義と手を結んだのか。ムンディファーマ日本法人のHPを覗いてみましょう。会社概要の冒頭に「ムンディファーマは『疼痛』『がん』『コンシューマーヘルスケア』の三つを事業の柱に、患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の向上に貢献」とあります。
 日本上陸時は明治と組んだムンディでしたが、その後、1989年から塩野義と提携し、がんの痛みを和らげる薬をつぎつぎ発売しています。塩野義の創業は1878(明治11)年に遡りますが、抗生物質や高脂血症薬など創薬の技術力には定評があります。ムンディファーマは、世界120か国以上に展開するグローバル企業であり、日本の市場と技術研究の環境は魅力的。大きな世界戦略のなかで塩野義を新たなパートナーとして選んだとみられます。カバくんの場合はデザインの問題ですが、その背景には、国内と世界の製薬メーカーの合従連衡(がっしょうれんこう)があるのですね。グローバルとローカルの2つの視点を持ってください。

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