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2016年01月13日

大リーグと日本のプロ野球、ビジネスの規模の違いはなぜ?

レジャー・アミューズメント

名門、史上最高の「ぜいたく税」(2016年1月9日朝日新聞夕刊)

 前田健太が入団した大リーグのドジャースが、名実ともに「大金持ち球団」になった。年俸総額の規定額を上回った球団に科せられる課徴金(ぜいたく税)の昨季金額が、史上最高となる約4360万ドル(約51億円)を記録した。
 AP通信によると、3年連続で超過したドジャースの昨季の球団総年俸は、約2億9790万ドル(約352億円)。昨年の規定額1億8900万ドル(約223億円)を大幅に上回った。約2610万ドル(約31億円)の課徴金を支払う「2位」のヤンキースに大差をつけた。

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 「カープ女子」で知られる日本プロ野球・広島東洋カープのエース前田健太投手(27)がポスティングシステムを利用し、米大リーグ(MLB)のロサンゼルス・ドジャースに移籍しました。8年契約で年俸は2500万ドル(約29億5000万円)+出来高払い。このほかにドジャースはカープに2000万ドルの「譲渡金」を支払うのですから、ずいぶん太っ腹ですね。

 今日のニュースでは、そのドジャースが史上最高額の「ぜいたく税」を支払ったことが取り上げられています。これは、球団が選手に払う年俸総額が一定額を超えた場合そのオーバー分に17.5~50%をかけた額を徴収し、半分は選手の年金基金に、残りは野球産業育成や野球のない国での選手育成基金に使うというものです。資金力のある球団が有力な選手をかき集めることを防ぎ、各チームの戦力の均衡化をはかるのが目的。戦力がある程度均衡化すれば優勝争いも盛り上がり、リーグ全体の売上増にもつながる、という仕組みです。

 記事によれば、ドジャースが今回払うぜいたく税は日本球団総年俸1位の読売ジャイアンツの年俸総額を上回るとか。気の遠くなるような格差ですね。球団それぞれが自分の売上のことだけを考えている日本と違い、MLBにはリーグ全体の売上を高める仕組みが整っていることがこの巨大な格差の一因です。MLBは子会社を通じて海外へのテレビ放映権販売やMLB自体のスポンサー集め、さらにインターネットを通じたMLBの試合放送やチケット、グッズのオンライン販売などビジネスを広げ、売上も急上昇。この売上は各球団に分配され、経営の苦しい球団にとっても非常にありがたい仕組みとなっています。「ぜいたく税」で戦力均衡をはかりMLB全体の魅力を高めようとしているのも、リーグ全体の売上を考えればこそなのですね。

 日本では球団が親会社の広告塔としての役割を担っているため、リーグ全体の収益や戦力均衡を考える必要性はありませんでした。ですが、ここまでMLBがスポーツビジネスとして華々しい成功を収めているのを見ると、日本プロ野球もまだまだできることはたくさんあると思わされます。プロスポーツやエンターテインメントは、必ず「ビジネス」としての側面を持っています。日ごろ目にするニュースの奥にどんなビジネスの構図が隠れているのか、意識的にアンテナをひろげていきましょう。

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