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2015年12月22日

キリンが創業以来の赤字 海外進出にリスクあり

食品・飲料

キリンHD、560億円の赤字見通し(2015年12月22日朝日新聞朝刊)

 キリンホールディングスは21日、2015年12月期の純損益の見通しが、560億円の赤字になると発表した。赤字になれば、1949年の上場以来、初めて。不振のブラジルの子会社での損失を処理するため、当初の580億円の黒字予想から下方修正した。

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 国内では少子高齢化が進み人口が減っていきますから、日本の会社が成長しようと思えば海外のニーズをつかまえにいく姿勢が欠かせません。飲料品業界では、海外進出に積極的だったのがサントリーとキリンでした。サントリーは2014年に「ジムビーム」などで知られる米ビーム社を約1兆6500億円で買収し、キリンも記事にあるブラジルのスキンカリオール社(現・ブラジルキリン)やオーストラリアのライオンネイサン社など大型買収を積極的に展開していました。国内ビール最大手のアサヒビールはこの流れからはやや出遅れており、海外売上高が全体に占める比率はサントリーやキリンに比べても低くなっています。

 しかし、海外事業には当然リスクもつきまといます。記事によれば、キリンがブラジルでの事業で直面したのが通貨安。ブラジルの通貨・レアルが下がったことで、輸入に頼っていた麦芽やアルミ缶の調達価格が上がり経営が苦しくなりました。もともと「バドワイザー」ブランドをもつアンハイザー・ブッシュ・インベブ(AIB)にブラジル国内でも圧倒的なシェアの差をつけられていましたが、ブラジル経済自体の低迷で市場自体も縮み、売上数量は年々減少。2016年から新たな中期経営計画が始まるのを機に、創業以来の赤字を計上してでもうみを出し切る選択をした、ということです。

 国外市場への進出をはかる時によく用いられる手法が海外企業の合併・買収(M&A)です。M&A助言会社レコフの調べでは、2015年の日本企業による海外企業のM&Aは11月段階で年間はじめて10兆円を突破し9年ぶりに過去最高を記録しました。しかし今回のキリンのように、買ったはいいが結局は重荷になってしまうというケースも少なくありません。為替の変動、経済や政治環境の変化、新しい技術の登場……。国内だけで仕事をする時以上に、海外でのビジネスには「想像もしない」事態への対応が求められる機会が多いもの。これから社会に出ていく皆さんが海外ビジネスにかかわる確率は思っている以上に高いはずです。企業の海外進出についてはこういった苦戦事例もニュースを通じてつかみ、心の準備をしておきましょう。

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