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2015年08月28日

東南アジア進出の中小向けレンタル工場、大手商社が本腰

商社

海外狙う中小向け/レンタル工場続々 すぐ操業・輸送も支援・・・商社が本腰(2015年8月26日朝日新聞朝刊)

 工場の建物を丸ごと貸し出す「レンタル工場」に大手商社が本腰を入れ始めた。東南アジア進出をめざす中小企業にとって、操業まで手間も時間もかからず、部品の調達や商品の輸送までサポートしてくれると好評だ。

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 記事では例として、ベトナムの首都ハノイ近郊に住友商事が運営するタンロン工業団地を紹介しています。キヤノンやパナソニックなど日系大手の工場が立ち並ぶ東京ドーム約132個分の大型工業団地で、その一画にある第3団地213万平方メートルの1割をレンタル工場に開発するそうです。入居を決めた1社、多摩電子(神奈川県綾瀬市)は携帯電話の通信基地局向けの装置やリチウム乾電池などを手がける本社従業員120人のメーカー。同社の社長は「社員は海外になれておらず、体力もない。それでも早く海外で操業したかった」と語っています。2015年9月操業の予定とのこと。タンロンのほかベトナムで商社がからむ日系の工業団地では、アマタ(伊藤忠商事)、ロテコ(双日)、ロンドウィック(双日ほか)などが知られています。

 JETRO(日本貿易振興機構)のレポートなどをみると、大手・準大手商社が東南アジアで手がけるレンタル工場は、ベトナムだけでなく、インドネシア(丸紅、伊藤忠商事、豊田通商など)やフィリピン(住友商事、丸紅など)にも広がっています。広い敷地を500~2000平方メートル程度に小分けして建屋を建て、それを丸ごと貸すのですが、工場を一から建てるのに比べて初期投資は10分の1で済むそうです。照明や空調などインフラも整い、すぐ操業が始められる。3~5年のレンタル料と自社工場建設費がほぼ同規模なので、事業がうまくいっていれば移転して自社工場を建てるのもよし、万が一思惑がはずれても撤退しやすいといいます。記事によれば、国際協力銀行が中小企業の海外展開に融資した件数は4年前の8倍近くに急増(図参照)。レンタル工場が中小メーカーの海外進出をしやすくしています。

 では、いまなぜ商社がレンタル工場に積極的なのでしょう。中小企業は人手も足りず、海外事業の経験がないところも少なくありません。海外ビジネスといえば大手商社の真骨頂(しんこっちょう)ですね。さらに記事は、「操業後、物流や材料調達で『協力』できるなど商社のビジネスチャンスが広がる可能性がある」と指摘しています。大手商社は原料や製品の輸出入を仲立ちする貿易だけでなく、1990年代以降、直接海外の鉱山開発やメーカーに投資したり、現地のインフラづくりにも関わったりしています。その蓄積がレンタル工場ビジネスに生きているのです。

 大手商社は、あらゆるビジネスを手がけるので「総合商社」とも呼ばれます。一見はなばなしいグローバル事業のなかには、このように国内の中小企業メーカーの海外進出を裏で支える仕事もあります。総合商社にはさまざまな顔があることを、みなさんにも知ってほしいと思います。

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