業界研究ニュース

2015年07月21日

YKK、本社機能を富山県黒部市に移転 狙いは何?

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(波聞風問)YKK、黒部に分散 地方移転の成功例になるか(2015年7月19日朝刊)

 黒部市に北陸新幹線の駅ができてから、YKKグループの吉田忠裕会長は週の半分ほどを黒部で働くようになった。YKKの本社機能のうち人事、経理、財務など管理部門が昨年度から黒部に移った。すでに110人が異動し、来春までに総計230人が移る。
 富山はYKKが戦後、工場を置くなどして再出発した地だ。黒部にはファスナーや建材の研究開発部門がある。今後はこうした部門も拡充する。東京に集中した本社機能を分散し、災害時に事業が続けられる体制をつくるのがねらいだ。東日本大震災をきっかけに検討を始め、具体化した。

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 本社機能の地方転出に関しては、2015年4月10日「一色清の今日の朝刊ウィークエンド」の「東京以外に本社のある企業にも注目しよう!」で詳しく取り上げています。民間調査会社・帝国データバンクの調べでは、東京都内から本社機能を移す企業が7年ぶりの低水準になった、とのことでした。

 今回取り上げた記事では、富山県黒部市に本社機能を移す計画をすすめているファスナー・サッシの大手メーカー、YKKグループが直面している問題をとりあげています。もともとYKKにとって黒部は開発、生産部門の本拠地でもあり機能の移転は比較的やりやすいと見られていましたが、壁となったのが住環境。持ち家率や広さは日本最高水準の富山県ですが、都会暮らしが長い人だと広い家は手入れも大変だし、女性の1人暮らしでは防犯面を考えると不安のほうが強いのだとか。また子どもの教育のことを考えると、単身赴任を選ばざるを得ない社員もいたようです。学生のみなさんにはまだぴんとこない話かもしれませんが、特に首都圏在住のみなさんは自分が地方勤務になった時にどういったライフイベントが起こるかイメージしておくと、いざという時に必要以上に悩まなくてすむでしょう。

 むろんYKKも手を打っています。黒部駅近くに250戸が入居し保育所や商業施設も備えた省エネ型集合住宅「パッシブタウン黒部モデル」を建設。全8街区にすべて違う設計を取り入れ、建築家の個性を競わせる予定だそうです。断熱性が売りのサッシも手がけるYKKグループにとっては、省エネ住宅に注目が集まるのは歓迎すべきこと。従業員の福利厚生と企業イメージアップの一挙両得を狙ったアイデアと言えそうですね。

 ファスナーでは世界トップシェアを誇るYKKは、世界約70カ所に拠点を持ちグローバル化を積極的に進めています。5年前の朝日新聞の取材に当時の社長は「オペレーション上の本部ってどこがいいのか考えたら、必ずしも日本ではない」とも語っています。今回の移転については法人税が優遇されるというメリットもありますが、一方で困難な点もあります。それでも移転を決断できたのは、トップがそういう方針を持っているからこそでしょう。みなさんも会社選びでワークライフバランスをみる際は、こういったトップの考え方や社風もあわせて考えてみましょう。

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