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2015年07月14日

レアアース、暴騰から一転急落 業界に与える影響知ろう

素材

レアアース、安値で明暗 中国規制撤廃、暴騰前水準に(2015年7月10日朝刊)

 ハイテク産業に欠かせないレアアースが5年ぶりの安値になっている。節約が進んだほか、大産地である中国の輸出規制を日米欧が撤廃させることにも成功した。ただ、「脱中国依存」を担おうとした米国の鉱山が破綻(はたん)するなど副作用も出ている。日本の資源関連企業も正念場だ。

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 レアアースとは「希土類(きどるい)」という17種類の元素の総称です。スカンジウムにイットリウム、ランタン、セリウム……と高校時代に化学を専攻していてもほとんど聞かないような元素が並んでいますが、永久磁石や蛍光物質の素材として使われ、電気自動車やハードディスクなど先端技術製品の製造に不可欠な「産業界のビタミン」と呼ばれる物質なのです。ちなみに「レアメタル」という言葉もありますが、これはレアアースを含む31鉱種の非鉄金属全体を指す言葉です。2013年6月24日の業界トピックスでも整理していますので、せっかくだから覚えておきましょう。

 このレアアース、世界の生産量の90%以上を中国が占めています。1990年代までは米国やオーストラリアが主産地でしたが、安さを武器に中国が寡占化をすすめました。中国のレアアース鉱床は精製がかんたんな「イオン吸着型」でコストがかからないことも寡占化の後押しとなりました。

 ただ、中国が2006年ごろからレアアースなどを保護するため輸出制限などを実施し、価格は上昇しました。2010年に尖閣諸島問題で中国が日本へのレアアース輸出を締め付けたために供給不安の声が高まり、価格はさらに高騰。日本や米国、EUがWTO(世界貿易機関)に提訴し中国は敗訴、価格はピーク時から最大で10分の1程度にまで下がりました。

 もっとも記事にあるように、日本にとってレアアースの輸入先を相変わらず中国がほぼ独占している状態は好ましくはありません。日本では2013年3月、最西端・南鳥島沖海底に中国の鉱床の10倍以上の濃度があるレアアース鉱床が存在していると発表されましたが、5000メートルを越す深度から発掘するのは非常に困難とも言われています。レアアース価格の急落によりビジネスとして成立させるのが難しくはなりましたが、中国以外の販路をできるだけ多く確保することも必要でしょう。レアアースをなるべく使わない永久磁石や製品の開発も進められています。

 名前は「レア」でも、かかわる業種は商社から電機、自動車、精密機器など幅広く、一つのイノベーションが市場の動向や日中関係のあり方まで大きく左右する可能性のある存在、レアアース。今後の動きもしっかり注目していきましょう。

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