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2015年07月10日

熾烈(しれつ)なコンビニ商品開発、目線が違うセブン?

流通

(経済気象台)ドーナツも、ですか?(2015年7月7日朝刊)

 先日、コンビニ大手のローソンを訪れてみて、あぜんとした。セブン―イレブンが本格展開して話題になったドーナツが、レジの横に並べられていた。
 100円コーヒーもセブンに追随したが、またか。「ひょっとして」と思い、ファミリーマートにも足を運んでみた。レジの隣ではないが、ドーナツが新たに品ぞろえされていた。

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 「経済気象台」は、朝日新聞の金融情報面に載るコラムです。社外のエコノミストや経済人が交代で匿名で書いています。コラムの末尾に2文字のニックネームが付けられていて、この日は「井蛙」さん。彼がたまたま訪れたローソンのレジ横で見かけたドーナツから筆が起こされています。レジ横といえば、小売店では一押し商品を置く定位置です。そこにセブン-イレブンが大々的に打ち出して評判のドーナツがあったというのです。気になってファミリーマートにも行ってみて、レジ横ではないもののドーナツの新製品が揃っているのを見つけます。

 井蛙さんは、マラソンでは2番手の勝率がよいのは、トップの陰で風圧を受けず、ラストスパートでトップを追い抜くからだという話を引き合いに出し、その位置につける他社の創造性のなさを嘆いています。GMS(総合スーパー)では、「新しいことに真っ先に取り組んできたトップランナーのダイエーが、イオンの軍門に下った」のと比較し、コンビニ業界では、2番手のローソン、3番手のファミマが、経済数値のあらゆる面で他者の追随を許さないセブンを追い越すことは難しいと書いています。

 おでんや、挽き立ての100円コーヒーもセブン発の大ヒット商品です。セブン銀行も斬新なアイデアでした。かつて、セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さんに話を聞く機会がありました。鈴木さんはセブンの商品開発にちょくちょく口を出します。「私が試してダメなものはダメ」というスタンス。「赤飯を試してくれというので食べてみたら、なにか違う。赤坂のあそこの店が出している、あれが赤飯だ。これは違うと思いましたね」と鈴木さん。工程を聞いたら、もち米をせいろで蒸さずに作っているというのです。蒸すのと炊くのでは手間が違い、現場ではとても出来ないとの判断だったようです。「これは赤飯ではない」との一声で、セブンの赤飯の工程が変わったといいます。

 鈴木さんは、「自分がお客だったら、この商品に満足する」という視点から判断を下します。現場の都合は二の次というのです。間近で聞いて、すごいなあと感心した覚えがあります。2番手、3番手に安住して、隙あらばトップの寝首をかくというのもビジネスの戦略かもしれません。でも、それが本道でしょうか。井蛙さんは、ローソンやファミマに奮起を促しています。もっと、お客目線のアイデアをぶつけあうことで、その業界はもっと活性化するでしょう。企業研究に、「この会社に創造性はあるか」、「ユーザー目線の商品を作っているか」という観点も、加えてみては?

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