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2015年06月23日

戦国時代?の製紙業界 再編・合併の動きに注目

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製紙大手2社、深い溝 北越紀州・大王、面談めぐり応酬(2015年6月17日朝刊)

 北越紀州製紙の岸本晢夫(せきお)社長は6月16日のアナリスト向け説明会で、大王製紙の佐光正義社長に求めた面談が実現しないことを「(社長が)逃げ回っている」と批判した。岸本氏は、北越と三菱製紙との販売会社の統合交渉が破談になったのは大王が介入したから、として説明を求めていた。大王側は「面談を求めるのは筋違い」と反論している。

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 いきなり社長同士のケンカの記事で面食ったかもしれません。まず、この記事の背景を整理しましょう。
 
 舞台は製紙業界です。国内市場最大手は王子ホールディングス(「ネピア」でおなじみ、2014年3月期売上約1兆3000億円)、2位は日本製紙(「スコッティ」でおなじみ、同1兆1000億円)で、この2社で国内シェアの約半分を占めています。2社への対抗をはかったのが、業界5位の北越紀州製紙(同2200億円)。まず6位の三菱製紙(同2000億円)と将来的な統合を視野に子会社の販売会社同士の合併を進め、さらに元会長が不祥事を起こした4位の大王製紙(同4300億円)の筆頭株主にもなりました。国内の紙需要はPCやスマホに押されて年々減少中。そのため生き残りをかけ3社で連合し、大勢力に立ち向かおうとしたわけです。中国・戦国時代の「合従連衡」を思い起こさせる話ですね。(わからない人はマンガ「キングダム」を読んでください)

 ところが今年4月、北越紀州と三菱の子会社統合が破談してしまいます。北越紀州の岸本社長はその原因を、「大王が三菱に経営統合をもちかけたため」と指摘し、冒頭の発言に至ったわけです。大王はティッシュペーパー「エリエール」など今後の成長が期待できる家庭用の紙に強く、一方の北越紀州は成長が期待しにくいコピー用紙や雑誌用の紙が主力。売上規模も北越の倍近い大王からすれば、成長力に乏しい北越に3社連合の主導権を握られるのがしゃくにさわったのかもしれません。2015年5月28日の記事では、「『白い紙』しかない北越が焦っているだけ」という大王首脳のコメントも紹介されています。こう考えると、一見無味乾燥に思えがちな経済ニュースがなんだか人間臭いドラマに見えてきませんか。

 経営統合や合併は業界の地図を塗り替える大きな仕掛けですが、過去を振り返っても発表後に破談になるケースが散見されます。たとえば、
●セガ(ゲーム会社)とバンダイ(おもちゃメーカー)の合併解消(1997)
バンダイ社内から社風の違いによる反対論が噴出し合併解消。のちにセガは遊技機器大手のサミーと合併、バンダイはゲーム大手のナムコと経営統合。

●あさひ銀行と東海銀行、三和銀行の経営統合解消(2000)
統合形態をめぐり、経営の独自性を保つことにこだわったあさひ銀行が3行連合から離脱。東海、三和はUFJ銀行に、あさひ銀行はのちに大和銀行と合併してりそな銀行になる。

●キリンとサントリーの経営統合破談(2010)
交渉を進めていたが、持ち株会社の統合比率で歩み寄れず打ち切り。統合が実現すれば世界の食品大手と肩を並べる規模になる予定だった。

 破談の理由はさまざまですが、ニュースをよく読むとそれぞれの会社の譲れない点、個性がよく現れています。自分の志望業界で過去にどんな業界再編があったか、合併や経営統合に成功した例、失敗した例も含めて幅広く知っておきましょう。

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