業界研究ニュース

2015年04月21日

その企業、10年後も同じ姿? 東洋紡のバイオ事業から考える

化学

骨再生の「種」開発 東洋紡と東北大、6月から臨床試験(4月15日朝刊)

 繊維大手の東洋紡が東北大と共同で、骨を再生させるスポンジ状の「骨の種」を開発した。骨が欠けたり、やせたりしたところに埋め込むと、周りの細胞が入り込んで骨を再生させる仕組みだ。6月から歯を支える骨の再生に実際に使う臨床試験で安全性などを確かめ、2018年度の製品化をめざす。

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 埋め込むと骨の再生を助けてくれるという、夢のような新素材のニュースです。開発にかかわった歯学教授の「患者の負担が大幅に減り、入院期間も短くなるだろう」というコメントも紹介されており、今後が楽しみですね。

 東洋紡は1914(大正3)年に誕生した繊維会社で、第二次世界大戦前には世界最大級の紡績会社に成長しました。繊維産業は鉄や石炭と並ぶ近代日本の基幹産業であり、1950年からの朝鮮戦争で発生した特需で息を吹き返した――といったくだりは、日本史の授業に出てきたかもしれません。
 その後繊維産業は70年代から安いアジア製の製品に押されるようになり、円高がその流れを加速。国内生産は衰退していきます。そのためメーカーは早くから本業以外の道に活路を見いだし、積極的な多角化を進めてきました。

 東洋紡は2002年、フィルムやプラスチックなどの非繊維事業が連結ベースで繊維事業の売上を抜いています。バイオ分野に関しては1940年代からパルプの廃液処理のために酵母の研究を始め、1972年には事業に進出。当時としては国内唯一の尿酸測定用診断薬を発売しました。現在は臨床検査用の試薬やバイオ関連研究試薬など幅広く事業展開。2012年には傷ついた神経の再生を促進する「神経再生誘導チューブ」を開発しました。ちなみに2013年の売上でみると、ライフサイエンス部門は全体の7.8%を占めています。「東洋紡」という名前からは想像もつかない事業展開をしているんですね。

 繊維産業から多角化していった企業といえば、ほかにも帝人や旭化成などがあります。繊維メーカーとしての印象がかなり薄れている会社もありますね。一方、三大紡績の一角を占めていたユニチカは昨年4月に経営危機が表面化。またカネボウは化粧品や食品など多角化経営を積極的に推し進めましたが経営が悪化し、粉飾決算を繰り返した結果会社は消滅しました。企業が生き残るとは、これほどまでに厳しいものなのです。

 企業は社会の公器であり、最大の目的は「存続すること」だといいます。そのためには今目の前にある主要事業を捨ててでも、新たな事業に乗り出す覚悟が求められるタイミングがあります。企業研究をする時、「10年後にこの会社はどうなっているんだろう」という視点を持つことも大切です。

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