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2015年04月03日

私鉄各社が葬祭場経営。そのワケは?

運輸

支えます、人生の終着駅 私鉄各社、葬祭業へ進出 (3月30日朝日新聞夕刊)

 このほど京王線北野駅(東京都八王子市)前に京王電鉄傘下の会社が葬儀場をオープンした。高度成長期に郊外の鉄道沿線で宅地開発を進めてきた私鉄各社が葬祭業に相次いで進出している。

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 記事の背景にあるのは、日本の少子高齢化です。
 高度成長期の1960年代から70年代、都市に集まるサラリーマンのために私鉄各社はデベロッパーとして沿線の宅地開発に邁進(まいしん)しました。ターミナル駅にはデパートや劇場などの商業施設を建て、大きな利益を上げてきたのです。しかし、そんな“よき時代”はもはや遠い昔話です。

 今年1月1日の朝日新聞朝刊に「日本の人口 8年連続減 自然減 過去最多の26.8万人」との記事が出ていました。厚生労働省の人口動態統計の年鑑推計によると、2014年に国内で生まれた子供は100万1千人(前年比2万9千人減)で過去最少。逆に死亡数は戦後最多の126万9千人(同1千人増)といいます。

 生まれる人より死ぬ人の多い時代なのです。「子どもが増えたから郊外の広い家に住もう」という人は減る一方で、宅地開発は下火、通勤客も増えない。どうする? かつて希望にあふれ郊外に持ち家やマンションを買い求めた人たちは高齢者。駅前周辺には手頃な土地が空いている……。そこで目をつけたのが葬祭ビジネス。こんなストーリーが描けます。
 冒頭の記事は、葬祭業に参入した鉄道会社5社の一覧表を掲げています。パイオニアは1997年参入の阪急電鉄で、現在4カ所。以降京浜急行電鉄、東武鉄道、南海電鉄、京王電鉄と続き、最多は南海の13カ所とのことです。

 しかし――。この記事の末尾で第一生命経済研究所の小谷みどり主任研究委員は、「近年は葬儀のかたちが大きく変化している」と指摘。「東京ではすでに3割近くが仮葬だけで葬儀を開かなくなり、都心の高層マンションの部屋でホームパーティー的な葬儀をする『自宅回帰』も始まっている」といい、鉄道会社はそんな変化への対応を求められるともコメントしています。次の時代はどう動くのか、常に考えながら業界研究してみましょう。

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