2014年11月06日

オバマ民主敗北で、日本の株価がなぜ上がる?

テーマ:国際

◆ニュースのポイント

「Yes we can」の合い言葉とともに、バラク・オバマ氏が初めての黒人大統領に就任して、はや6年。4日に投開票された米国の中間選挙で、オバマ政権にとって野党である共和党が、米議会の上下両院で過半数の議席を獲得しました。選挙前は、上院は民主党、下院は共和党がそれぞれ過半数を握るという、いわゆる「ねじれ」状態が続き、数年前の日本の「ねじれ国会」と同様、政策決定などの停滞を招いていました。
 今回、両院ともに、主導権が野党の共和党に移り、オバマ大統領の政権運営はますます苦しくなりました。それなのになぜ東京の株式市場は値上がりしているのでしょうか。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「東証続伸、5日連続/米選挙受け、円安も進行」です。
 記事の内容は――5日の東京株式市場は、米国の中間選挙での共和党の勝利を受けて値上がりした。日経平均株価終値は前日より74円85銭高い1万6937円32銭で約7年1カ月ぶりの高値となった。日本銀行が追加の金融緩和を決めてから平均株価は上昇を続けてきたが、5日は利益確定のための売りもあり、一時は前日終値を下回っていた。
 それが同日午後に米国の中間選挙の情勢が伝わると一転、米経済の活性化策への期待からドルが買われて円安が進み、日本の輸出関連企業の業績改善を見込んだ買いが集まった。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

◆就活アドバイス

 アメリカの大統領を決める、という選挙であれば、みなさんもニュースに注目するかもしれませんが、「中間選挙」と聞くと、なかなか興味はもてないかもしれません。
 しかし、今回の記事を見てもわかるように、米議会の動向は日本の経済に確実に影響します。二大政党である民主党、共和党がどんな主義主張をもっているか、ざっくりでいいのでおさえておきたいところです。

 そもそも中間選挙とは4年ごとにある大統領選挙の中間の年に、議会の上下院議員や州知事らを選ぶ選挙で、任期6年の上院の約3分の1、任期2年の下院の全員が改選されます。州知事選は36州で実施されました。その結果、野党である共和党が8年ぶりに両院の過半数議席を獲得しました。州知事の改選により共和党の知事が29人から31人に増えました。

 共和党の米議会での発言権が大きくなることで日本の株価がどうして上がるのか。二つの理由が考えられます。

 一つめの理由は円安の加速です。一般的に円安になると輸出関連企業の業績が好転します。日銀が追加の金融緩和を決め、このところ市場は円安・株高の流れとなっていました。そこに、今回の選挙結果が加わりました。医療保険制度改革や、最低賃金の引き上げなど、福祉の充実を掲げてきたオバマ民主政権とは対照的に、共和党は企業重視の政策を訴えています。アメリカのさらなる景気回復が期待できるということで、ドルがどんどん買われています。米国株式市場のダウ平均(ダウ工業株30種)も過去最高値を更新しました。
 
 もう一つは環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が妥結に近づくとの見方です。共和党は自由貿易を推進する立場をとっています。関税交渉で日本の譲歩が求められる可能性も高いですが、交渉合意でメリットを得る日本企業も多いことから、東京の株式市場では好感されているのです。

 アメリカ独特の選挙システムまでは把握できなくても構いません。日米関係の今後や日本経済への影響、という部分だけでもいいので、新聞を拾い読みしておきましょう。

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