2014年09月26日

おいしい薬!? 進化するジェネリック医薬品

テーマ:経済

◆ニュースのポイント

 みなさんが薬を飲む機会といえば、風邪をひいたり、頭痛がしたり、といった限られたときかもしれません。薬というと、薬局などで手軽に買える市販薬のイメージが強いかもしれませんが、医薬品の国内生産額約7兆円のうち、約9割が医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」で、市販薬など一般向け医薬品は1割程度です。私自身も持病があり、血液をサラサラに保つため、医師の処方で毎日20錠近い薬を飲んでいます。数が多いこともあって、一種の苦行のようになっています。私に限らず、中高年や高齢者になると、どこかしら、体の不調があり、日常的に薬を服用している人は少なくありません。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、経済面(11面)の「後発薬、味で勝負/抹茶・ココア…各社開発にしのぎ」です。
 記事の内容は――苦い薬を飲むのは苦痛という患者の声に応えようと、後発薬メーカー各社が「おいしい薬」づくりに力を入れている。見た目は白く丸い錠剤だが、口に含むと、抹茶味(脳卒中薬)や、オレンジヨーグルト味(胃腸薬)がする。後発薬(ジェネリック)大手の沢井製薬の製品の一例だ。東和薬品が開発した認知症の薬は、おかゆに混ぜて飲めるように梅味をつけた。日医工の胃腸薬はいちごヨーグルト味。テバ製薬は大人でも飲みやすいようビターココア味を出した。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

◆就活アドバイス

 「良薬、口に苦し」――。薬は苦いもの、そして、必ず水か白湯(さゆ)で飲むもの、と教えられて大きくなりましたが、いまはもうそんな「常識」にとらわれている時代ではないようです。
 そもそも最近よく耳にする後発薬(ジェネリック)とはなんなのでしょうか。新薬の開発には10年以上の期間と、1000億円規模のお金がかかるといわれています。ヒット薬が生まれれば、世界での年間売り上げが10億ドルを超えることもありますが、そう簡単なことではありません。

 後発薬は、そういったヒット薬の特許(一般的には20年間)が切れた後に、同じ有効成分を使って販売される薬のことです。研究や実験などの開発費や、宣伝費がいらない分、コストが抑えられ、販売価格もそれだけ安くなります。日本では、高齢化による医療費の増大、健康保険の財政難から、国も後発薬の使用を推進しています。
 後発薬メーカーは順調に売り上げを伸ばし、新薬開発がメインの製薬大手も、海外の後発薬メーカーを買収するなどして、対抗しています。

 とはいえ、後発薬が普及すると、今度は後発薬メーカー同士の競争が激しくなってきます。特許が切れていますから、どの会社でも同じ有効成分の薬が作れます。そんな状況のなかで、「選ばれる」ためにはどうしたらいいのか、そこが知恵の出しどころです。値段を安くする、上手に宣伝するなど、他社との差別化にはいろんな手段があるでしょう。「おいしい薬」も、その手段の一つです。

 今回紹介した医薬品に限らず、他社と競合する商品やサービスをもつ企業、ビジネスはたくさんあります。顧客にとっての「あったらうれしい!」を意識することはビジネスの基本ですが、みなさんの就活にも似たような面があると思います。
 採用担当者に「こんな人が我が社に来てくれたらうれしいな」と思われるにはどうしたらいいのか。
 自分自身が、新薬のように、だまっていても選ばれる「オンリーワン」になるのは、難しいかもしれませんが、ジェネリックのように、工夫次第で、幅広く、みんなの役に立つ人になることは、できるかもしれません。日常的に、立場を入れ替えて考える癖をつけることで補える部分もありますよ。 

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