2014年05月19日

世界に誇る「イノベーション」生み出す日本企業

テーマ:経済

ニュースのポイント

 最近、「イノベーション」という言葉をよく聞きますよね。「革新」「技術革新」と訳され、アベノミクスの成長戦略のカギを握るとも言われます。イノベーションをキーワードに企業を見てみましょう。

 今日取り上げるのは、オピニオン面(9面)の社説「成長への展望/イノベーションこそ」です。
 記事の内容は――上場企業の好決算が相次いだが、株式市場の動きはさえない。新たな成長の展望を描けない企業が多いからだろう。求められるのは、人材に投資して能力を結集し、イノベーション(革新)を生み出す態勢だ。日本企業が「技術で勝ってビジネスで負ける」と言われるのは、①社会の変化が生む潜在的なニーズがつかめない②自社内外の技術やデザインを売れる商品に結びつけられない、ことが原因だ。この弱点を克服している企業もある。工場向けのセンサー類などを手がけるキーエンス(大阪市)は、営業担当者が客先から聞いた苦情や要望、相談をカードに記録し、開発担当者に集積。個々の顧客が欲しいものをつくるのではなく、多くのカードから大勢の顧客の「求めるもの」を知り、汎用性(はんようせい)のある技術や製品につなげている。冷凍システムなどをつくる前川製作所(東京都)は、顧客の工場に営業、製造、設計など部門横断的なチームで出向いて話を聞き、チームで話し合いニーズを掘り下げてから製品開発を始める。日本政策投資銀行が開く「イノベーション・ハブ」のように複数の企業が知恵を出し合う場も生まれている。こうした中堅・中小を含む企業群がオープンな議論を通じてニーズを把握し、社内に埋もれた技術や人材の再評価に踏み出していければ、日本の産業界も面目を一新する。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 イノベーションとは、従来のモノや仕組みにとらわれずに、全く新しい技術や考え方を採り入れた製品やサービスで新たな価値を生み出し社会的に大きな変化を起こすことを指します。オーストリアの経済学者シュンペーターが初めて定義しました。文部科学省のホームページでは、技術面と市場面でのインパクトの度合いから、以下の四つの類型があるとしています。
①構築的革新:これまでの技術・生産体系を破壊し、全く新しい市場を創造するもの(例:飛行機、コンピューターの発明)
②革命的革新:既存の技術・生産体系を破壊するが、既存の市場との結びつきを維持していくもの(例:アナログからデジタルへのオーディオの技術革新、自動車におけるマニュアルからオートマチックへの移行)
③間隙(かんげき)創造的革新:既存の技術・生産体系の中で、新たな市場を開拓していくもの(例:ヘッドホンステレオ、家庭用テレビゲーム機)
④通常的革新:技術、生産手段の改良等により、より安く高品質の製品・サービスを提供するもの

 わかりやすい例を挙げれば、かつてソニーは「ウォークマン」で一人ひとりがどこでも好きな音楽を楽しめるイノベーションを起こしました。しかし、今ではアップルのiPod、iPad、iPhoneによるイノベーションで市場を奪われてしまった、と言えそうです。

 ただ日本企業も捨てたものではなく、昨年、米経済誌フォーブスが選んだ「世界で最も革新的な企業」トップ100には、日本企業が11社ランクインしました。楽天(9位)、ユニチャーム(14位)、ファナック(26位)、キーエンス(36位)、ヤフージャパン(38位)、SMC(61位)、任天堂(84位)、セコム(86位)、クボタ(89位)、花王(97位)、ダイキン(100位)です。私たちの日常生活ではあまりなじみがない企業も入っていますね。工作機械のファナック(山梨県)、今日の記事にも登場したキーエンス、空気圧制御機器メーカーのSMC(東京都)です。日本には、学生への知名度が低く、就職人気ランキングの上位には入らなくても、世界に誇るイノベーションを生み出す企業があるのです。会社説明会や企業のホームページで、「イノベーション」をキーワードに企業の取り組みを調べてみてください。

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