2014年05月08日

活躍する「ゆとり世代」 自分らしさを大切に

テーマ:文化

ニュースのポイント

 みなさんは、「ゆとり世代」と呼ばれることがあると思います。この言葉は否定的に使われることが多く、そもそも世代でレッテルを貼られることに反発を感じる人もいるでしょう。芸能・スポーツの分野で活躍する人が多いとも言われます。みなさんはどう感じますか。

 今日取り上げるのは、テレビ番組面(19面)の「記者レビュー/『ゆとり』のレッテルは」です。
 記事は、記者が番組を見た感想を書いたものです。内容は――TBS系のドキュメンタリー「情熱大陸」は4日、1988年生まれの著名人へのインタビューの前編を放送した。選ばれたのは俳優の黒木メイサ、大島優子、プロサッカー選手の吉田麻也など俳優やアスリートら8人。「ゆとり世代」とされる彼らだが、言葉は自信にあふれ、力強かった。「やるべきこと」を見据え、人生と格闘している彼らの「今」が伝わる一方、内実を知ろうとせず、レッテルを貼って決めつけようとする世間への懐疑を感じた。番組プロデューサーは、この世代は他より活躍している人が多いといい、「ゆとり」だから競争にもまれていないわけではなく、「彼らは自分の頭で考え、人生を歩んでいる」と話す。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 ほかの出演者は、プロ野球選手・前田健太さん、俳優の東出昌大さん、松坂桃李さん、シンガーソングライターの加藤ミリヤさん、バイオリニストの五嶋龍さん。
 「世代ではくくれないのでは」(黒木さん)、「世代でくくられるの、ほんとに嫌いですね」(吉田さん)。出演者は、世代でひとくくりにされることに対する反発や違和感を語ります。もちろん一人ひとりまったく違う個性で輝いている人たちですが、育った時代や環境が世代の特徴や傾向には影響していると思います。

 「ゆとり教育」を受けたから、ゆとり世代と呼ばれるようになりました。でも、みなさんを取り巻いてきた環境は教育だけではありません。経済的には、バブルが崩壊し不振が続いた「失われた20年」とほぼ重なります。就職状況は上向きですが、大きな流れでみれば、グローバル化の波に洗われ大学を卒業しても正社員になれるとは限らない厳しい時代です。生まれたときからインターネットやパソコンが身近にある中で育った「デジタルネイティブ」世代でもあります。ネットやスマホで見知らぬ人ともすぐにつながり、他の世代よりも簡単に世界中のさまざまな情報に触れて育ってきました。

 慶応大学大学院特別招聘教授の夏野剛さんは昨年の朝日新聞のコラムで、「ゆとり世代」の特徴を書いています。今の若者にはマイナーなスポーツで活躍する選手が次々現れ、ファッションも音楽の趣味もばらばらで「とても多様性に富んでいる」と指摘しました。今の閉塞感をもたらしたのは、みんな同じ方向に向かって走り続け、異種性を排除してきた団塊の世代がリーダーシップを発揮してきたからだと言い、先行きが見えない複雑で変化が激しい時代の中で「今の若者世代は実は、日本が生き残るためのしなやかな強さを持ち合わせた世代」「多様性のある若者世代が閉塞感を打ち破ってくれると楽しみにしている」とエールを送っています。

 いま就活で壁にぶつかっている人も多いと思います。「情熱大陸」では、8人が熱い思いや決意、これまでの苦労や努力を語り、素顔もうかがえます。何かを成し遂げた人たちですが、まだまだ挑戦し続けてもいます。先輩ゆとり世代の声に、元気をもらえたり、前に進むヒントを得たりするかもしれませんよ。後編は11日(日)の夜放送予定です。

 「一色清の世の中ウオッチ」でも、「『ゆとり世代』は実はすごいのではないか」(2月6日の第33回)で、スポーツや芸術の分野で活躍する人が多く、ゆとり教育がいい影響を与えたのではないかと論じています。読んでいない人はぜひ目を通してみてください。

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