2014年03月28日

少子化、海外、デジタル…ベネッセにみる日本企業の課題

テーマ:教育

ニュースのポイント

 通信教育最大手のベネッセホールディングス(HD)の会長兼社長に、日本マクドナルドHDの原田泳幸(はらだ・えいこう)会長が就きます。少子化の中、海外事業を強化しデジタル展開も進めるという狙いからの人事です。少子化対応、海外事業、デジタル展開は、多くの日本の企業が直面する課題です。

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「ベネッセ新社長 原田氏が就任へ/マクドナルドHD会長」です。
 記事の内容は――ベネッセHDは会長兼社長に原田氏が就く人事を発表した。最高顧問になる福武総一郎会長は「ITとグローバル経営の経験を発揮してほしい」と原田氏を招いた狙いを説明した。原田氏は、米アップルコンピュータ(現アップル)日本法人や日本マクドナルドの社長として業績を大きく改善させた。ベネッセは「赤ペン先生」と呼ばれる添削指導員による通信講座で知られ、現在も売上高の約5割を占める。しかし少子化の影響もあり、小中高校向けの「進研ゼミ」と幼児向けの「こどもチャレンジ」の会員はピーク時の420万人から、2013年4月には385万人に減少した。今年4月には進研ゼミにタブレット端末を本格導入し、紙中心からデジタル機器も使った事業への転換を目指す。カギとなるのは海外事業の強化。1988年に台湾へ進出し、2006年には中国や韓国でも幼児向け講座を開始、会員数84万人の事業に成長している。海外での売上高は現在15%。原田氏は「海外が国内を逆転するようなグローバル化を進める」と強調した。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 こどもチャレンジ、進研ゼミ、進研模試など、ベネッセの教材を使ったことがある人も多いと思います。2013年3月期のベネッセHDの売上高は約4500億円。国内最大の教育事業会社です。しかし記事にもあるように、教育産業は少子化の影響をもろに受ける業界でもあります。

 そこでベネッセが活路を求めているのが海外事業です。2006年の中国・韓国進出以降、本格展開してきましたが、これをさらに加速させると宣言したわけです。世界75カ国で展開する語学学校「ベルリッツ」をグループ企業に持っているのも強みです。一方で記事にはありませんが、高齢化社会に対応して老人ホームなどのシニア・介護事業も積極的に展開しており、すでに売上高の16%を占めています。

 もう一つ、時代の変化に対応しているのがデジタル展開。最近、赤ペン先生への疑問点を生徒がタブレット端末に書き込むテレビコマーシャルを盛んに放映していますよね。デジタル時代の教育をリードしようという意気込みは相当なものだと思います。

 「人事のホンネ」でベネッセコーポレーションの澤和宏さんはこう語っています。「選考のプロセスではいろんな学生が来ます。『まじめできっちりこつこつ』という優等生的な人が集まる会社、学級委員長タイプが多い会社だとよくいわれますが、一方で『求めている学生像』は少し違います。教育業界は今後変わっていかなければなりません。その変化をリードしていく人材がほしいんです。ビジネス志向でアグレッシブな人、困難を突破してそこから新しい物を作ってみたいというような人を求めています」。今回の外部からの社長起用も同じ発想なのでしょう。ベネッセコーポレーションが朝日新聞社とともに2011年に始めた「語彙・読解力検定」も、そんな新しい試みの一つです。

 こうした課題は教育業界に限りません。少子高齢化、海外事業、デジタル展開というキーワードで、自分の志望業界、目指す会社がどんな対応をしているのか、企業ホームページや新聞記事検索で調べてみましょう。

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