2014年03月04日

ロシアに経済制裁?日本の商社・自動車メーカーに大きな影響

テーマ:国際

ニュースのポイント

 ロシアのウクライナへの軍事介入で、ロシアと関係が深い日本企業に不安が広がっています。米国がロシアに対する経済制裁を検討し始めたからです。日本とロシアの経済関係は年々強まっていて、商社、エネルギー、自動車などの業界は固唾(かたず)をのんで情勢を見守っています。

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「日本企業 広がる不安/対ロシア制裁検討/燃料・車に影響」です。
 記事の内容は――ウクライナに軍事介入したロシアに対し、米国が経済制裁の検討を始めた。ロシアと欧米の関係悪化は日本にも響く。日ロの経済関係は年々強まり、2013年のロシアから日本への輸入総額は2兆3017億円、日本からロシアへの輸出総額は1兆693億円にのぼる。輸入の8割を占めるのが石油や液化天然ガス(LNG)などの化石燃料。東日本大震災後、火力発電用のLNGが大量に必要になり、ロシアからの輸入が急増した。東京ガスはLNG輸入の10%をロシアに頼る。トヨタ、日産、三菱の自動車3社は、市場拡大を見込んでロシアに工場を置き、多くの部品をロシア国外から調達している。経済制裁で部品がそろわなければ操業に大きく響く。中古車など高額商品の取引ではすでに影響が出始めている。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 昨日に続きロシアのウクライナ軍事介入の話題です。ウクライナは日本から遠く、経済関係もさほど深くはありません。ただ、日本とロシアの経済的な結びつきは近年、急速に強くなっています。そのロシアに対して、米国が経済制裁をちらつかせ始めました。米国の政府高官が「我々は同盟国とともに(ロシアとの)経済や貿易関係を縮小する幅広い選択肢を検討している」と語りました。北方領土問題解決を重視してプーチン大統領との首脳会談を重ねてきた安倍首相は、秋に大統領訪日も控えていることもあり、ロシア批判を抑え気味ですが、欧米そろって制裁となれば足並みをそろえざるを得ません。

 日ロの経済関係の柱は、エネルギーと自動車です。記事に出ている「日ロ貿易の概要」の図表を見てみてください。北海道の真北に位置するサハリンの原油・LNG開発は、伊藤忠商事、丸紅、三井物産、三菱商事といった総合商社が主導しています。背景にあるのは、米国の「シェール革命」(1月22日の「商社志望者も必見!『シェール革命』で潤う日本企業はどこだ?」参照)。米国でのLNG生産が増えて世界のエネルギー生産に余裕が生まれ、売り先に困ったロシアは日本への売り込みと共同開発を進めました。加えて、東日本大震災で原発が止まった日本が大量の石油・LNGを必要としたため、輸入量が増えています。「資源大国」ロシアにとって、その輸出は経済成長の柱。経済制裁がロシアの資源輸出を狙い撃ちすれば、日本のエネルギー輸入に影響が及びそうです。

 自動車では、図表に出ているトヨタのほかにも、日産が2009年、三菱自動車が10年、マツダは12年から、ロシアに工場を建てて現地生産しています。ロシアは資源価格の高騰などで2000年代から高い経済成長を記録し豊かになってきました。自動車の販売台数も伸びており、各社ともロシアでの需要はもっと伸びるとみて増産を計画しているところです。経済制裁となれば、記事にあるように部品が調達できなくなって大きな打撃を被る可能性があるのです。

 ウクライナ情勢の緊迫化で昨日、日本を含め世界で株価が急落しました。商社、エネルギー、自動車業界を目指すみなさんだけでなく、早くも多くの企業に影響が出そうな状況になってきました。ホットなテーマだけに面接でも話題になるかもしれませんよ。

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