2014年02月27日

宇宙に挑戦!自己満足をビジネスに

テーマ:経済

ニュースのポイント

 いま地球を1日14周している小さな人工衛星が、夏にも北極海の画像を地球に送信してきます。関わった人たちの「自力で気象観測をしたい」「宇宙を気軽に使える世の中にしたい」という夢が結実します。夢や自己満足を「世の中のためになるビジネス」につなげた熱いドラマがありました。

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の連載「けいざい新話・宇宙を我らに/気象会社から『革命起こそう』」です。
 連載1、2回目の内容は――①衛星は27センチ四方、重さ10キロの箱形で、打ち上げも含めてかかった費用は2億6000万円と、大きさも価格もふつうの衛星の数十分の1~百分の1だ。超ミニ衛星を組み立てたのは、東大大学院で宇宙工学を学んだ中村友哉(34)が立ち上げた宇宙ベンチャー「アクセルスペース」。大手衛星メーカーに就職する道もあったが、〈自己満足ではなく、ビジネスとして。ぼくにしか、できないことをやりたい〉と一念発起。設立前にお客さんを探しに苦労する中、日本発で世界最大の気象会社ウェザーニューズから反応があった。
 ②ウェザーニューズ創業者・石橋博良が商社マン時代、担当の木材運搬船が爆弾低気圧で沈み15人が死亡。〈船乗りに本当に必要な気象情報があれば、命を救えた〉との思いを抱いて会社を設立した。石橋の右腕の取締役・山本雅也(59)は電機メーカーで衛星開発をしていたが、米国の後追いばかりの仕事に失望して転職。あるとき「北極海航路」のための気象観測ができないかと思い立ち、〈人工衛星を持とう〉と決意した。石橋はアクセルスペースの中村に「うちは気象革命をおこす。君たちは宇宙革命を起こせ」と言い、超ミニ衛星づくりが始まった。=敬称略

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 天気予報、衛星放送、通信など人工衛星を使ったビジネスが広がる中、アクセルスペースの中村さんは多くの企業が当たり前に人工衛星をもてる新しい時代を切り開こうとしています。中でも「自己満足ではなく、ビジネスとして」という点がポイントです。就活で夢を語ったり、「社会の役に立ちたい」と社会貢献をキーワードにしたりする学生が多くいます。素晴らしいことですが、企業はボランティア組織ではありません。売り上げがなければ夢は実現できず、社会の役にも立てません。中村さんが会社設立の前に、需要を掘り起こそうと多くの数十社の会社を回ったのもこのため。就活で夢や社会貢献を語るときには、常にビジネスの視点を意識し、志望業界なら何ができるのかを考えてください。

 ウェザーニューズが目を付けたのは「北極海航路」です。日本から欧州に船で行く場合、中東のスエズ運河か、南アフリカの喜望峰を通るのが普通ですが、近年、地球温暖化で北極海の氷が小さくなり、夏の間は船が通れるようになりました。詳細な観測情報を船に提供することで北極海航路が実現すれば、航行距離は3~5割短くなって船会社はコストを大きく削減。二酸化炭素(CO2)も減らせます。これも「世の中のためのビジネス」ですね。北極海航路はこれからさらに注目されるはずです。商社や海運関係の業界志望者も調べてみてください。

 ただ、極めて高価な衛星を企業が単独で打ち上げるのは簡単ではありません。連載の3、4回では、どう壁を乗り越えたかが描かれます。筆者は「中島隆の輝く中小企業を探して」でおなじみの中島編集委員が書いています。引き続き読んでみてください。

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