2013年12月25日

過去最大96兆円の政府予算案から日本を考える

テーマ:政治

ニュースのポイント

 安倍政権は来年度の政府予算案を決めました。一般会計の総額は過去最大の約96兆円です。政府の予算案からは、いま日本が置かれている状況や抱えている課題、この国がどこへ向かおうとしているかなど、さまざまなことが見えてきます。国の大きな方針ですから、みなさんが目指す業界にも影響します。

 今日取り上げるのは、1面トップの「予算 大盤振る舞い/来年度 過去最大96兆円案決定/消費増税控え軒並み増額」を始め、2、3、5、6、9面で展開している政府予算案決定関連の記事です。
 記事の内容は――来年度予算案の総額は、今年度当初より3.5%増えた。歳出で最も大きい年金、医療などの社会保障費は4.8%増で初めて30兆円を突破。公共事業費は12.9%増の6兆円、防衛費も2.8%増の4.9兆円となった。歳入は、消費増税と景気回復で税収が2007年度以来の水準となる50兆円を見込む。新たな借金となる新規国債の発行額は41.3兆円で3.7%減らす。今回の予算案は、来年4月から8%に引き上げる消費増税で家計に負担増を求める一方、どこまで予算のムダを削り、1000兆円の借金を抱える財政を立て直す姿勢を示せるかが焦点だった。しかし、増税分をあてる年金や医療などの社会保障だけでなく、公共事業や防衛、農業など主な項目が軒並み増え、歳出の膨張に歯止めはかからない「大盤振る舞い」の予算案となった。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 「政府の予算なんて自分には関係ないし」と思っている人もいるかもしれません。たしかに、「96兆円」と言われても、あまりに巨額でピンときませんよね。でも、政府のお金は私たちが納めている税金。その使い道を決めるのが予算案です。どこにどう使うかは、私たちの暮らしを大きく左右しますから、大いに関心を持ってください。

 みなさんにとっては、就活の業界研究の観点から見てみることも大切です。医療にかかわる予算は病院など医療機関や製薬業界の経営に直結しますし、公共事業予算は建設などインフラ業界、防衛予算はすそ野の広い防衛産業、教育予算は教育産業と、各業界の行方を左右します。中でも産業振興・科学技術分野には、安倍政権の看板「アベノミクス」が重視する産業の競争力を引き上げるための予算が計上されました。環境や医療など成長が見込まれる分野の中小企業の研究開発や販路開拓費、がんの早期診断や新薬開発などに必要な技術開発支援事業費、産業用3Dプリンターの技術開発費、車の自動運転システム研究費など、企業を直接後押しする予算です。志望する業界に関連する予算案について調べてみましょう。

 もう一つ、みなさんに考えてほしいのは、この国の借金体質についてです。積み上がった借金は1000兆円超ですから、国民1人あたり約800万円の借金を背負っていることになります。さらに来年度予算では、税収が年50兆円しかないのに、96兆円のお金を使うというのです。その分は、国債という名の新たな借金などで賄います。借金はいずれ返さなければなりません。みなさんやもっと若い世代、まだ生まれていない世代に負担が先送りされています。これがいかに異常か、2面の「ニュースがわからん!」で家庭の財布になぞらえて解説しています。

 政府は来年1月に開く通常国会に予算案を提出し、今年度内の成立をめざします。自民・公明の巨大与党が作った予算案なので大きな修正はなく成立する可能性が高いですが、国会の審議では、予算案の中身について侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が交わされます。新聞記事で気になる見出しを見つけたら、読んでみてください。
                                                                                                                                                                                                                                 
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