2013年11月15日

「ドコモとiPhone」で読む日本の敗北と未来

テーマ:経済

ニュースのポイント

 NTTドコモが米アップルのiPhoneを売り始めてまもなく2カ月。10月の契約数は、9月の純減から増加に転じました。ただ、au、ソフトバンクとの安値競争が過熱し、国内の携帯端末メーカーとともに、ドコモも疲弊しています。背景には、ドコモが国内メーカーと築いてきた「護送船団方式」がアップルや韓国サムスン電子に敗れた構図があります。グローバル時代を生き抜くには、世界市場を見据えた戦略が必要です。

 今日取り上げるのは、経済面(6面)の「けいざい深話・ドコモとiPhone③/『アップルが勝者』安値競争続く」です。
 記事の内容は――ドコモは今年5月、サムスン電子とソニーの端末を重点的に売る「ツートップ戦略」をとったが、不発に終わり、ツートップから外れたNECやパナソニックはスマホの撤退や縮小を表明した。ドコモはiPhone販売に舵(かじ)を切ったが、日本の携帯市場は普及が「1人1台」を超えた成熟市場。au、ソフトバンクとの安値競争が激しくなっている。アップルは厳しい買い取りノルマなどを課しており、ドコモにも疲弊の色がにじむ。「いまはアップルが勝者」(NTT首脳)という状況だ。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 ドコモは国内メーカーとともにネットワークを築き、端末を開発し、サービスを広げる「自前主義」をとってきました。独自に進化した携帯は日本だけで通用する「ガラケー」と揶揄(やゆ)されながらも、最大手ドコモとの「護送船団方式」で生きながらえてきました。護送船団とは、もっとも速度の遅い船に合わせて航行することから、ある産業で過度の競争を避けて業界全体の存続と利益を確保する方式をいいます。ドコモのもとで国内シェアを分け合うことで生き延びてきたのです。

 そこにやってきたのが「世界標準」のスマホの時代です。スマホではアップルが先行し、アンドロイド方式ではサムスンが世界市場を席巻しています。国内でもスマホは急速に普及しますが、ガラケーでもうけてきた日本メーカーは遅れをとり、携帯とスマホを合わせた国内の出荷台数は2012年度にアップルが25%を超えて初めて首位に立ち、サムスンと合わせると30%を上回りました。10年前には国内シェアトップだったNECのスマホ撤退は国内メーカーの「負け」を象徴しています。

 そんな中、富士通はスマホで世界市場に打って出ることを明らかにしました。今は日本とフランスでしか販売していませんが、今後、ドイツ、北米、南米、アジアなどに広げていくといいます。核になるのは、文字が大きく操作しやすい中高年向けの機種です。昨夏にドコモから出した「らくらくスマホ」をベースに開発しました。各国とも高齢化が進むなか、チャンスがあるとみています。日本は「高齢化先進国」。得意分野での世界進出は、スマホに限らず、今後さまざまな分野での世界展開のヒントになるかもしれません。

 メーカーなど世界展開をしている企業の研究をするときには、過去数年の世界規模での業界の大きな構図を意識して理解を深めてください。日々の新聞記事のほか、「就活ニュースペーパー」の「業界マップ」、経済系の出版社が出している「業界地図」が参考になります。

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