2013年10月17日

正解はない…記者は悩み、議論して、書く。就活も同じ

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 新聞に日々たくさん載る記事は、記者がどんな思いで取材し書いているのか。普段は見えませんが、今日の「新聞週間特集」では、悩みながら取材する記者の声や、社内で議論しながら企画を練っていく過程をお伝えしています。世の中で起きる出来事に一つの正解はありません。みなさんも日々悩み、ときに友人と議論しながら、自分なりの答えを探してください。

 今日取り上げるのは、17面~20面の新聞週間特集のうち、20面の「異論 反論 紙面の華/TPP賛否 編集委員が激論」です。
 記事の内容は――環太平洋経済連携協定(TPP)について、朝日新聞の社説では、早くから「交渉に参加して日本の立場を主張していくべきだ」と論じてきたが、個々の記者のコラムや一般記事ではTPP批判も少なくない。社内には様々な意見があり、それを尊重するのが朝日新聞の流儀だ。ただ、読者には分かりにくいため「TPPどう考える 本社編集委員が議論」という紙面で、賛成派、慎重派の編集委員が討論し、論点を整理した。どちらかに軍配を上げることが目的ではない。新聞の役割は、対立をあおるのではなく、考える材料をいかに提供できるかにあるはずだから。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 新聞は、世の中の出来事を広く伝える報道機関であると同時に、主張を展開する言論機関でもあります。各新聞がそれぞれの考えを日々表明しています。TPPをはじめとして、「こうすべきだ」という朝日新聞の主張・意見は社説に載ります。こうした主張には、もともと正解がある訳ではありません。社説を担当する論説委員というベテラン記者約20人が毎日、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をして方向性を定め、担当の記者が議論を踏まえて書き上げるのです。今日の20面ではほかにも、オピニオン面の「耕論」コーナーが、オピニオン編集部の全員で何度も討議しながら企画を練って作られていく様子を「編集会議 ガチンコ勝負」との見出しで紹介しています。

 みなさんがこれまで学校や入試で受けてきたテストには、必ず正解がありました。高校や大学の入学試験では、「○○点以上取れば合格」という基準がありました。しかし、社会に出て仕事で直面する課題には、正解も基準点もありません。だから、ひとり一人の社員が知恵を絞って考え、悩み、上司やチームで議論して方針を決めていきます。就活も同じです。就活生からときどき「エントリーシート(ES)にどう書けば内定できますか」と「正解」を求めるストレートな質問を受けることがあります。「必ず通るES」や「こうすれば内定する方法」はありません。なぜその業界、企業を目指すのか、自分の何をアピールするのか。まず悩み、ときには友人や家族に相談しながら探してください。また、ある出来事について自分の意見を言ったり、人の意見を聞いたりしてみましょう。身近な人と議論して一つの結論を導き出す作業は、採用選考のグループディスカッション(GD)の訓練になります。GDはなかなか練習できないので、ぜひ意識して今の時期に取り組んでください。

 今日の「新聞週間特集」には、ほかにも多くの記者が顔写真付きで登場し、普段は明かさない取材の裏側を吐露しています。東日本大震災の被災地で、長男を津波で失った父親からの「息子に会いたくなったら、また、この記事を読めばいいんですね」という言葉に力をもらって取材する記者。ツイッターでの抗議や中傷に戸惑いながらも、声援に応えようと、またつぶやく記者。違法ではないけれどおかしい「患者紹介ビジネス」を4カ月以上かけて追った記者。4人で計130時間張り込んで福島第一原発周辺の「手抜き除染」を暴いた記者。10年間で30人の記者がかかわって蓄積してきた取材記録をもとにした連載「原発利権を追う」の裏側。追い出し部屋やコールセンターの厳しい現実など、社会の裏側に迫った記者の本音。記者たちの思いから、ジャーナリズムの本質が見えてきます。

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