2013年08月01日

安藤選手出産を機に考える「マタハラ」のない会社選び

テーマ:社会

ニュースのポイント

 フィギュアスケートの安藤美姫選手の出産公表に心ない批判が出たことに、「集団マタハラ(マタニティー・ハラスメント)」との指摘が出ています。妊娠・出産した女性への職場での嫌がらせのこと。出産後に職場復帰して安心して働けるかどうかは、会社選びでとても大切な要素のひとつです。マタハラのない会社を選ぶにはどうしたらいいのでしょうか。

 今日取り上げるのは、社会面(37面)の「ニュースQ3/子どもはほしい、でも…。のしかかる不条理」です。
 記事の内容は――安藤選手の出産公開に批判の声が出たことについて、女性の人権問題に詳しい伊藤和子弁護士は「こんな集団マタハラがまかり通る社会では女性の活躍はのぞめない」と言う。広告デザイナーの女性(40)は会社で妊娠を告げた途端、仕事を次々と外され、育休から復帰すると異動を命じられた。結局、会社を辞め友人と独立。「キャリアを諦めるまでは産むことを認めてもらえないの?」と嘆く。出版社勤務の女性(35)は上司から「いま産休に入られると困る」と告げられた。女性会社員(39)は不妊治療を理由に休職を願い出たが、そのための休職制度はなく退職を決めた。作家の室井佑月さんは「そもそも出産ってとても個人的なこと。人がとやかくいうものではない」としつつ、「いま不安なく産めるのは、かなり選ばれた人か何も考えてない人ぐらい。自分一人ではなく、世の中が子育てを支えてくれるという安心感が必要」と話す。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 マタニティー・ハラスメントの実態はまだまだわかっていないのですが、労働組合・連合の調査では、妊娠経験のある316人のうち4人に1人がマタハラを受けたと答えています。企業にマタハラがあるかどうかを知るのは簡単ではありません。ヒントになるのは、女性の採用人数、育児休暇制度、女性社員の既婚率や離職率、平均勤続年数といった制度の内容やデータです。「就職四季報 女子版」(東洋経済新報社)などで公表している会社もあります。

 ただ、公表していない会社も多いのが実情です。やはり社員に直接聞いてみるのが一番です。12月から始まる会社説明会などでは、就活生からは質問しづらい項目かもしれません。そこでお薦めするのはOB・OG訪問です。1社一人ではなく何人かの社員に会ってください。中には本音で話してくれる社員がいると思います。出産後に職場復帰して働いている女性社員を紹介してもらい、直接話を聞けるといいですね。

 今日の記事にグラフが出ている「M字カーブ」にも注目してください。結婚や出産、子育てを機に仕事を辞める女性が多いことを示しているのですが、他の先進諸国には見られない日本独特の現象です。結婚するか、出産するか、仕事を続けるかどうかは、個人が選択することですが、働き続けたいのに退職せざるを得ない、退職に追い込まれるというのは、あってはならないことです。少子化、人口減少による労働力不足が懸念される中、多くの女性が仕事を辞めざるを得ないのは、日本の経済にとっても大きな損失です。M字のへこみをなくすことは、個人ではなく社会全体で解決すべき大きな課題なのです。

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