2017年06月30日

公用車で保育所OK? 会社員にもある「公私混同」の線引き

テーマ:社会

ニュースのポイント

 金子恵美総務政務官(自民・衆院新潟4区)=写真=は、自身のブログで子どもの保育所への送り迎えに公用車を使ったことを明らかにしました。週刊新潮に「公私混同」と報道されたことを受けたものです。公務の経路を大きく外れるわけではなく、総務省の公用車運用ルールに則っていると主張しています。確かにこれくらいで目くじらを立てなくてもいいのでは、という気もします。ただ、政治家なら子育てをしながら懸命に働いている一般の人たちがどう思うか、という点も想像しないといけません。周りに疑われるような行動はするなという意味の「李下に冠を正さず」は、立場が上がれば上がるほど肝に銘じないといけない言葉です。覚えておきましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、社会面(36面)の「金子総務政務官 公用車で保育所/『規則に則っている』」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

公用車で保育所に立ち寄り

 金子政務官のブログによると、総務省や議員会館での公務のついでに会館内の保育所に立ち寄り、公用車に子どもを乗せたことが複数回あったということです。保育所は、議員会館内にある認証保育園。金子議員は、総務省だけでなく議員会館の事務所でも日頃公務をしています。また、総務省に行く時も議員会館のそばを通るそうです。そこで「保育所送迎の時間前後に公務があった時は、公用車に子どもを乗せたことが複数回あった」とのことです。また、「普段は新潟に住んでいる足が不自由な母親を、公用車に同乗させたこともあった」と言っています。総務省は、移動経路を大きくそれることなく家族が同乗していたので、「問題はない」としています。
(写真は、衆院第2議員会館内にある認証保育所「キッズスクエア永田町」)

「公用車を使うのはおかしい」という批判

 一方、これを問題視する人もたくさんいます。「自分たちは、猛烈に忙しい朝に自転車に乗せて子どもを保育所に送ってから電車で通勤しているのに、税金を使った公用車で保育所送迎という私事をしているのはおかしい」という論理です。特に、金子議員の夫は、イクメンを売りにして男性国会議員初の育児休業をとろうとしていた宮崎謙介さん。出産間際に不倫をしていたことを週刊誌に書かれ、昨年、議員辞職しています。ですから中には「夫が送迎すればいいだけのことじゃないか」という人もいます。 
 ちなみに、金子議員のブログによると、「通常、保育所の送迎は家族で分担している。私がベビーカーを押して歩いて通うこともあるし、夫が自家用車で送迎する場合もある」とのこと。また、「夫婦ではどうにもならない時は、新潟に住んでいる母に頼み込み、東京に出てきてもらっている」とのことです。

公私の境目で迷ったら「私」に

 今回の問題は、それほど悪質な話とは思いませんが、社会人だれもが考えないといけない点が潜んでいます。「公私混同の線引き」の問題です。社会人になると、仕事にかかる経費が発生します。交通費、飲食費、資料代などです。会社員ならそれを会社に請求できますし、自営業者なら税金を減らすことができます。ただ、その経費が仕事のために必要だったかどうかは微妙なことがよくあります。仕事上の関係がある友人と会食したとしても、単に旧交を温めただけの場合もあります。この会食費を経費としていいのかどうか、微妙なところです。そうなると、その会場に行くのに乗ったタクシー代も経費かどうか微妙になります。ケースによって会社や税務署によってはっきり仕分けのできているものはいいのですが、グレーゾーンは必ずあります。つまり、「公」か「私」かの境目です。自分が境目だと思って迷ったら、「私」に仕分けをするというふうに決めておくのがいいと私は思います。

「李下に冠を正さず」

 「李下に冠を正さず」という言葉が最近よく使われます。李とはスモモのことです。スモモがなっている木の下で曲がった冠を直すと、スモモを盗っていると誤解されますよ、という意味です。「瓜田に履を入れず」も同じで、瓜畑でかがんで靴をはき直すと瓜を盗んでいるのではないかと疑われますよ、という意味。いずれも「疑われるような行いは避けるべきだ」という中国の古典にある教えです。

 実例を挙げると、安倍首相が親友の経営する学校法人だけに獣医学部の新設を認めるというのは、不正のあるなしにかかわらず便宜を図ったと疑われるわけです。だから、首相は親友の仕事にかかわるときにはより慎重にしないといけません。「公」か「私」か、微妙だと思った時には「私」として処理するのがいいというのは、同じことです。公私混同と後ろ指をさされる可能性がある場合は、潔く私の領域と判断して自助努力で解決するようにしましょう。仕事と家庭の両立に努力している金子議員も、こんなことで公私混同と批判されて悔しいでしょう。でも、境目を「公」と判断してしまったのだから、仕方がありません。
(写真は、今話題になっている加計学園の獣医学部建設予定地です)

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