2017年06月23日

会社で一番えらいのは誰? 株主総会のイロハを知ろう!

テーマ:経済

ニュースのポイント

 3月期決算企業の株主総会が本格化しています。ピークは6月29日になります。株主総会と言えば、株式会社にとっては最高の決定機関です。かつて株主総会は形骸化しているといわれましたが、徐々に実質的な議論が行われるようになっています。ルールも少しずつ変わっていて、今年からは大口株主の機関投資家議決権行使の状況を個別開示するようになります。個人株主にとって判断材料が増えるわけで、企業をチェックする機能は前進しています。会社勤めをするなら、イロハとして株主総会のことを知っておきましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「機関投資家の賛否注目 株主総会議決権行使を個別開示」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は、ある大企業の株主総会の会場に入る株主たちの様子)

期末から3カ月以内に総会

 株式市場に上場している株式会社は決算を公表しないといけません。一番大事な決算は1年間の決算です。1年の期間の決め方は会社によって違いますが、圧倒的に多いのが国の会計年度である4月~3月を1年としている企業です。3月期決算企業と言います。こうした企業は、3月末までの1年間の業績をまとめて4月下旬から5月にかけて発表します。株主総会は、決算期末から3カ月以内と決められていますので、6月末までに株主総会を開くことになります。3カ月の期間をめいっぱい使おうとする企業が多いため、今年も6月末の29日に3月期決算企業の約3割が集中しています。株主総会には株主であれば誰でも参加できます。そこで決算や人事などの議案について議決権を行使します。

総会屋が跋扈していた時代も

 株主総会は最近、本来の趣旨に近づいてきました。かつて日本の株主総会は、早く終わらせることがいいことだとされていました。まっとうな株主からの意見はあまり出ず、総会屋と呼ばれるブラックな人たちが跋扈(ばっこ)していました。株主総会を担当する総務部は何事も起こらず早く終わらせることを使命としていましたので、しつこく質問する姿勢を見せる総会屋にお金を渡して黙らせたり、会社に取り入ろうとする総会屋にはお金を渡して議事進行を早める役割を担わせたりしていました。総会が終わると真っ先にかかった時間を発表する時代で、30分以内で終わらせると総務部は「合格」と社内で言われました。

今は長いことが開かれた証し

 それが1990年代から時代が変わり始めました。総会屋を巡る様々な事件などをへて、警察の総会屋に対する取り締まりが厳しくなり、企業も本来の株主総会のあり方に立ち返ろうとするようになりました。加えて、経済のグローバル化が正常化の後押しをしました。資本主義の本場の欧米では、日本の「しゃんしゃん総会」は異様に見えます。日本企業の株主に欧米の資本が入るようになると、総会屋ではないまっとうな株主の質問が出るようになりました。企業も早く終えることという使命は捨て、逆に長くやることが開かれた会社の証しという空気に変わりました。その結果、今では様々な意見が戦わされた末、会社提案の議案が否決されることも珍しいことではありません。
(写真は、総会屋を控え対策本部を設置する大阪府警=2014年5月16日朝日新聞朝刊に掲載)

会社で一番えらいのは株主

 会社のことをよく知らない人は、会社で一番えらいのは社長だと思っているでしょう。それは間違いで、会社で一番えらいのは株主です。社長などの経営者は、資本家である株主から委託されて経営しているわけです。株主総会で、社長などの人事案が否決されれば別の人事案を提案しなければなりません。つまり、株主総会が社長などを決める人事権を持っているのです。また、合併や提携、売却などの会社の形が変わるような大きな決定は、株主総会の了承が必要です。たとえば、東芝が半導体部門を売却しようとしていますが、売却先が決まっても株主総会がノーといえば、白紙に戻ります。今の東芝の議論をみると、技術を流出させてはいけないなどという国益が前に出ています。しかし、株主の利益は何かというと、出来るだけ高い値段で売ることです。会社は株主のものであることを忘れた議論をしていると、株主総会でノーを突きつけられるかもしれません。若いうちは意識することは少ないかもしれませんが、会社で一番えらいのは株主だということを知っていて損はありません。

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