2017年06月16日

景気拡大、バブル期抜く!でも実感がない理由

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「景気の拡大は続いており、その長さはバブル期を抜き、戦後3番目になった」と言われて、みなさんはどう思いますか。「えっ、そんな実感はないよ」という人が多いのではないでしょうか。中には、就活がかつてに比べて楽になっているので、「確かに景気はいいよね」と思う人もいるかもしれません。国内の景気局面を判定する内閣府の景気動向指数研究会が15日、2014年の消費税増税時の景気の悪化は「後退」とまでは言えないと結論づけました。これによって、今は「戦後3番目の長さの景気拡大を継続中」ということになりました。みなさんは幸せな時代に就活を迎えたと言えますが、消費も物価も賃金もほとんど上がらない不思議な景気拡大であることも忘れてはなりません。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、5面の「消費増税時『後退』至らず 景気拡大バブル期超え濃厚」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、企業で面接を待っている就活生たちの様子です)

谷から山が景気拡大期

 景気とは、経済活動の勢いを示す言葉です。経済活動が活発なら「景気はいい」、不活発なら「景気は悪い」となります。景気には波があります。ある年を100とした景気動向指数のグラフを書くと、上り坂が頂上に来ると下り坂になり、下り坂が底に来ると上り坂になります。この頂上を「景気の山」と呼び、この底を「景気の谷」と呼びます。そして、谷から次の山までを景気拡大期とし、山から次の谷までを景気後退期としています。景気拡大期が長く、景気後退期は短いのが一般的です。
(図表は、2010年を100にした景気動向指数のグラフ=2014年5月31日朝日新聞朝刊に掲載)

戦後3番目の長さに

 戦後最も長い景気拡大期は2002年2月から2008年2月までの6年1カ月です。日本神話に出てくる男神「いざなぎ」の妻である「いざなみ」の名を取って、「いざなみ景気」と名付けられています。次が1965年11月から1970年7月までの4年9カ月です。これが「いざなぎ景気」です。今の景気拡大局面は、2012年12月から始まっていますので、2017年4月までで4年5カ月となります。これは、1986年12月から1991年2月まで続いた「バブル景気」を抜いて戦後3番目の長さになりました。ほかにも名前のついている景気としては、1958年7月から1961年12月まで3年6カ月続いた「岩戸景気」があります。今の景気には、まだ名前はありません。
(図表は、戦後の景気拡大の長さランキング=2017年4月8日朝日新聞朝刊に掲載)

かつてはヒマラヤ、今は丘

 景気拡大期の長さは、21世紀になってからが1位と3位を占めていることになります。21世紀になって経済運営がすごく成功しているように感じるかもしれませんが、2回とも「実感なき景気拡大」と言われます。表を見てください。いざなぎ景気のころは高度成長期で、成長率は11.5%とふたケタに乗っていました。雇用者報酬は毎年17.5%も伸び、個人消費も9.6%も伸びていました。それが、いざなみ景気では成長率は1.7%、今回は1.3%にすぎません。個人消費や雇用者報酬もほんのわずかの伸びしかありません。景気拡大と言っても、高度成長のころはヒマラヤのような山ですが、最近の景気拡大はゆるやかな丘といっていいと思います。人口減少期に入った成熟経済の下では、個人消費や設備投資は構造的に増えそうになく、景気はごくゆるやかにしか動きません。ほんの少しだけ拡大したり縮小したりする動きしかありませんので、景気の「いい」「悪い」をはかる意味は薄らいでいると言えます。

人手不足を好景気と勘違いするな

 そんな静かな今回の景気拡大局面でひとつだけ激しく目立っているのは、人手不足です。これはいざなみ景気の時より深刻で、バブル景気の時に匹敵します。数年前まで就職氷河期と言われたのがウソのようで、二股三股の内定は当たり前の売り手市場になっています。会社側が旅行などで拘束するという話を聞くのも、バブル期を思い出させます。ただ、これを日本経済の絶好調を示すものだと勘違いしてはいけません。人手不足の最大の理由は、生産年齢人口の激減です。
 1947~49年に生まれた団塊の世代が2012~2014年に65歳を迎えました。65歳前に働くことをやめた人も70歳くらいで働くこともやめる人もいるでしょうから、2010年代にほとんどの団塊世代が労働者数から抜けると考えられます。つまり、その間、毎年数十万人のレベルで減少の影響が出ています。高齢者や女性にもっと働いてもらおうという政策は、この現象を少しでも埋めたいがためです。日本経済は景気のよしあしにかかわらず、今後も低成長が続くことは間違いありません。就活は楽かもしれませんが、会社に入ってからはそんなに楽ではないことを肝に銘じておきましょう。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから