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2017年06月15日

「共謀罪」法成立…「安倍1強」と国会の存在意義

テーマ:政治

ニュースのポイント

 昨日から今朝にかけて徹夜国会の大混乱の末、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法が、15日朝の参院本会議で成立しました(写真)。「安倍1強」体制のもと、政府・与党は異例の強引なやり方で採決を強行しました。「共謀罪」法って何なのかをおさらいしつつ、何が起きていたのか、わかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、
・1面「『共謀罪』法案 きょう成立/自公、参院委審議打ち切る/本会議で採決強行へ」
・2面「時時刻刻・『共謀罪』自公突進/会期内ありき 奇策を強行/『加計国会』に幕引き図る」
・3面「疑問 残したまま/変遷『周辺者』も処罰/目的『対テロ』外れる」
・オピニオン面(14面)「社説・国会最終盤 極まる政権の強権姿勢」
・社会面(34面)「問う『共謀罪』」
・社会面(35面)「不安置き去り 乱暴すぎる/国会で街で 抗議 深夜まで/『熟議ほしかった』」
(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。

「共謀罪」法をおさらい

 改正された法律は、暴力団など組織的なグループの犯罪を取り締まる「組織的犯罪処罰法」です。テロ集団などの組織的犯罪集団が、対象となる277の犯罪を2人以上で計画し、資金や物品の手配や場所の下見などの準備行為をした段階で処罰できるようになります。

 過去に3回国会に提出されたものの廃案になった「共謀罪」の趣旨を含むため、朝日新聞などは「共謀罪法」と呼んでいます。犯罪を実行に移した段階から処罰する日本の刑事法の大原則を変えるもので、「市民団体も対象になるのでは」「心の中で思ったことで逮捕されるのでは」と心配されています。国連の特別報告者も「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と懸念を表明しました。一般人が捜査対象になるかどうかや、捜査機関の判断次第で解釈が拡大される心配など、多くの疑問や対立点が解消されないまま採決が強行されました。
(写真は、国会前で「共謀罪」反対を訴える人たち=14日午後11時52分)

世論は「反対」多数

 政府は「共謀罪」とは違うとして、「テロ等準備罪法」と呼んでいます。安倍首相は「東京五輪・パラリンピックに向け、テロ対策に万全を期すことは最重要課題だ」と強調していますが、野党側は今ある法律の予備罪などで対応できると主張してきました。世界でテロが相次ぐ中、国内でのテロを心配している人は多いと思います。それでも、朝日新聞の世論調査では当初「賛成」が多数でしたが、審議が進むと「反対」が上回りました(グラフ)。

 改正法の内容は「『共謀罪』ってなんだ? これを読めばちょっとは語れる!」(3月22日)で書いたときと同じです。こちらも読んでみてください。

なぜ急いだ?

 そんな中、与党は参院法務委員会での審議を打ち切り、参院本会議で直接採決する「中間報告」という「奇策」に打って出ました。なぜ、こうまでして成立を急いだのでしょうか。この法案を今国会でなんとしても成立させるのが安倍政権の大方針でした。国会の会期末は18日に迫っているものの、会期を延長することはできます。しかし、担当する金田勝年法相(写真)の国会での答弁はつじつまが合わなかったり迷走したり。法案の審議を続けるほど矛盾点があらわになる状況ですから、これ以上審議したくなかったわけです。もっと大きいとみられているのは、会期を延長すると森友学園や加計(かけ)学園の問題で野党に追及の機会を与えてしまうことです。さらに、23日には東京都議選が告示されます。選挙中も加計問題や共謀罪で国会がもめていれば、自民党や公明党が戦いづらいという事情もあります。強引な手法をとっても、国民はやがて忘れるだろうと思っているのでしょう。

国会は何のため?

 今回の強引な手法によって、憲法で「国権の最高機関」と定められている国会の存在意義が問われています。選挙で各党が政策を訴え、多数を得た党が与党として政権を担い、必要と考える予算案や法案をつくって国会に提出。国会で審議して多数の賛同を得て成立させ、省庁が執行していくのが立法と行政の仕組みです。国会でまともな審議をしなかったり、野党の意見や問題点の指摘に全く耳を貸さなかったりして、与党の考えをとにかく押し通そうとするのなら、国会なんていりませんよね。

 もちろん、与野党は多くの点で意見が対立します。しかし、過去には野党の意見を一部取り入れて修正したケースもたくさんあります。名議長といわれた故河野謙三・参院議長は、少数党に7割、政権党に3割配慮するのが国会運営の要諦(ようてい)という「七・三の構え」を説きました。とくに今回のように賛成と反対の意見が激しく対立し、国論を二分するような法案こそ、丁寧に審議して、問題点があれば修正して、できるだけ多くの人が納得する形で成立をはかるべきでしょう。

 いま米国でも欧州でも、世論が二分され、社会が「分断」されているといわれています。自民党が圧倒的な多数をもつ「安倍1強」体制のもとで、こうした強引な政治手法を続ければ、日本でも社会の分断が進みかねません。大きなテーマですが、共謀罪法の成立を機にみなさんも考えてみてください。
(写真は、「共謀罪」法成立を受け記者の質問に答える安倍晋三首相)

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