2017年05月17日

高島屋社長が語る「百貨店の未来」は?

テーマ:経済

■ニュースのポイント

 百貨店が苦境にあります。景気は上向いているのに、賃金は伸びず、消費は増えません。コンビニ、ユニクロなどの専門店、ネット通販の普及などの逆風を受け、売上高は全国で減っています。昨日も書きましたが、自ら商品を仕入れて売り場をつくる「百貨店業」から、有力専門店に場所を貸す「不動産業」に力を入れていますが、どんな未来像を描いているのでしょうか。高島屋の木本茂社長(写真)が語りました。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、金融・経済面(12面)の「聞きたい・消費不振 どうする百貨店?/高島屋社長木本茂氏/テーマ重視で『発見』取り戻す」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。

長期低落

 私が小さいころ、日曜日に家族で「お出かけ」するときのワクワクする行き先の一つが百貨店、デパートでした。近所のスーパーには売っていないちょっと高級感のあるモノが何でもそろっていて、屋上は子ども向けの遊具がある小さな遊園地。ランチは大食堂でお子様ランチが定番でした。しかし1970年代に入ると、「価格破壊」を旗印にしたスーパーに売り上げで抜かれ、さらにコンビニの拡大、ユニクロやニトリなどの専門店が急成長、ネット通販も普及して、かつてのにぎわいはなくなりました。
(写真は、子どもたちに人気があった阪急百貨店の屋上遊園=1971年、大阪市で)

閉店に人員削減…

 近年、訪日外国人客の「爆買い」で一時盛り返しましたが、これもピークが過ぎて、いよいよ苦しくなっています。とくに人口減少が進む地方や郊外の百貨店は経営が厳しくなり、閉店が相次いでいます。5月10日には、三越伊勢丹ホールディングス(HD)が人件費抑制のために早期退職者を募集すると発表しました。

 百貨店の苦境については、「業界研究ニュース」でも取り上げています。
「『爆買い』一服の百貨店業界はどこへ」(1月24日)
「逆風吹きつける地方百貨店、生き残り策は?」(2月28日)
(写真は、3月に閉店した三越千葉店=三越伊勢丹HD提供)

「脱百貨店」

 暗いニュースが続く中、久々の明るいニュースが、昨日も取り上げた東京・銀座の複合商業ビル「GINZA SIX」(写真)の開業です。大丸や松坂屋を運営するJフロントリテイリングが松坂屋銀座店の跡地につくりましたが、キーワードは「脱百貨店」。安定したテナント収入による「不動産業」で稼ぐ戦略です。
「日本郵政が野村不動産買収へ?百貨店、マスコミも不動産で稼ぐ」(5月16日今日の朝刊)

 これまで不動産事業に消極的だった三越伊勢丹HDも、社長交代を機にニトリやユニクロなどの誘致も「生き残りのためにやる」(杉江俊彦社長)と方針を転換します。

テーマ重視の売り場

 今日の記事のインタビューで、高島屋の木本社長は、2017年2月期決算の営業利益で動産業の112億円が、国内百貨店業の108億円を上回ったとしたうえで、「ただ、不動産シフトではない。百貨店と専門店の相乗効果で人が来る。もちろん百貨店の売り場も強化する」と語りました。

 社長が語るキーワードは「テーマ重視の売り場」です。かつての百貨店は、旬の商品をスカートやセーターなど品目ごとに並べ、家電や家具もありましたが、効率的に売るために婦人服フロアが増え、ブランドごとに区切るようになりました。この結果、「こんなものがあるのか」という発見や買い物の面白みがなくなったと言います。今の消費者は「自分の価値にあうものを比較して買い、コーディネートしたい欲求がある」ため、ブランドの垣根を越えて衣服や雑貨を売る新しい売り場「シーズンスタイルラボ」や、産後に必要な服やベビーベッドなどを集めた「ハローベビーサロン」といった「テーマ重視」で欲求に応えようとしているそうです。さらに、便利な百貨店アプリや仮想通貨のような新しい決済にも対応して若い世代を取り込む考えです。

 時代に合わせて売り場を変えることで、消費者をどこまで呼び戻せるのか。注目してください。百貨店の仕事の魅力や求める人物像については、「人事のホンネ」で高島屋の採用担当者にじっくり聞きました。こちらも読んでください。(写真は、高島屋人事部人事・採用育成担当係長の安達早紀さん)

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