2017年04月21日

決算で企業研究しよう!面接で語れば…

テーマ:経済

ニュースのポイント

 みなさんが企業研究をするとき、何から始めますか。新聞やネットでその企業が関係している記事を読んだり、先輩の話を聞いたりするのもいいでしょう。私は、その企業の決算を見るのがいいと思います。業績が好調か不調か、利益の源泉は何か、投資は増やしているのか減らしているのか、いろいろなことが分かります。そんなに重要なものですが、最近大企業でも決算発表に四苦八苦する姿が散見されます。東芝が決算発表できなくて大騒ぎをしたところですが、今日の朝刊には、日本郵政が大きな損失を出しそうだという記事や富士フイルムが決算発表を延期するという記事が出ています。適正な決算を公表することは、資本主義社会の基本です。決算の大切さを知りましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、経済面(11面)の「日本郵政、巨額の減損検討/最大3000億円超/豪の子会社不振」と「富士フイルム 決算発表延期/傘下の会社、不適切会計」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

驚きの損失

 日本郵政のケースは、2015年に買収したオーストラリアの物流会社「トール」の業績が低迷し、買収したときより企業価値が落ちているため、その分を損失として決算に計上しようというものです。最大で3千数百億円もの損失になりそうで、投資家にとっては驚きです。富士フイルムのケースは、海外のグループ会社で不適切な会計処理が見つかったため、27日に予定していた決算発表を延期するというものです。何年かにわたって利益を過大に計上していたようで、こちらも決算で大きな損失を計上することになりそうです。
(写真は、日本郵政の長門正貢社長)

監査法人は信用回復へ必死

 最近、こうした決算のドタバタが多くなっているような気がします。東芝が2015年に過去6年間にわたって利益を水増ししていた粉飾決算が明らかになり、さらに2016年にはアメリカの子会社が大損を抱えていることが発覚し、東芝は2016年度の決算ができるのかどうかの瀬戸際に来ています。東芝の前には、精密機械メーカーのオリンパスで長年にわたって続いていた粉飾決算が発覚し、これも大騒ぎになりました。大きな流れとしては、短期的な利益を重視するアメリカ型資本主義が浸透するにつれ、決算をよく見せ、株価を上げようとする企業の意識が強くなっています。一方で、それを防ぐために存在する監査法人が、相次ぐ粉飾決算の発覚で信用回復の必要に迫られている事情もあります。このため、以前に比べてチェックを厳しくしている監査法人が、おかしなところのある決算書にはハンコを押さなくなっているようです。
(写真は、決算についての記者会見の冒頭で頭を下げる東芝の綱川智社長=4月11日)

これから決算発表続々

 適正な決算を公表することはどうして大事なのでしょう。資本主義社会は、投資家が企業に投資をすることで回っています。つまり、上場企業は株式を発行して投資家からお金を集めて、工場を作ったり原料を買ったりして経営しています。株価が高くなればなるほど、たくさんの金を集めることができるようになります。加えて、株価は企業の将来性も見ていますので、高ければ投資家が将来性のある企業とみていることになり、企業イメージもよくなります。では投資家は何を見て株を買うとか売るとかの判断をするのでしょう。基本は決算です。今、上場企業は3カ月ごとに年4回決算を公表します。一番注目されるのは、年度で4回目の決算の時に合わせて公表される年間決算です。上場している会社の多くは、3月期を決算時期としていますので、年間決算は4月から5月にかけて発表し、6月の株主総会で承認を求めるという流れになります。今、決算に関する記事が多く出るのは、年間決算の発表の時期が迫っているからです。

売上高と利益を見よう

 決算の見方はそう難しくはありません。要約した形のものを決算短信といいますが、見るのはこれでいいでしょう。ポイントはいくつかあります。ひとつは売上高の推移です。前の年より増えているのか、減っているのか。増えていれば、会社全体のビジネス活動の規模は大きくなっていることになります。次に営業利益という欄があります。これはその会社の本業でもうけた金額です。本業が元気かどうかはここで分かります。次に経常利益があります。こちらは、余ったお金や持っている不動産などを運用して入ってきた利益などが含まれます。会社全体の力が反映しますので、利益の指標としては最も大事なところでしょう。大雑把に言えば、収入も利益も増えている会社は発展している会社、収入は増えているが利益は減っている会社は発展にややブレーキがかかっている会社、収入は減っていて利益は増えている会社はリストラをしている会社、収入も利益も減っている会社は衰退している会社とみることができます。

決算は会社の通信簿

 決算は会社の通信簿です。どの企業も当然よく見せたいわけですが、そのためにごまかせば犯罪になることもあります。ほぼありのままの姿が数字に表れていると思いましょう。そして自分で行きたい会社の決算短信を見てみましょう。面接などで決算の数字を交えて語れば、よく勉強している学生と思われるはずです。

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