2017年04月18日

アジアと欧州の交差点…トルコってどんな国?

テーマ:国際

ニュースのポイント

 トルコで憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、賛成が過半数を占めました。トルコは今の議院内閣制から大統領制に変わることになりました。アジアの西の端にある遠い国ですが、欧州にまたがり、アラブとも接するだけに、世界の安定のカギを握る国の一つです。そのトルコで何が起きているのか、「基本のき」を知っておきましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(2面)の「時時刻刻・トルコ大統領 強大権力/国民投票 僅差で改憲賛成/民主的手続き 独裁リスク/離れる価値観 欧州危惧」、国際面(9面)の「トルコ 問われる政権運営/大統領選 19年予定/治安・経済 先行き楽観できず」、オピニオン面(14面)の「社説・トルコ改憲 強権政治深める危うさ」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、国民投票勝利を確信して喜ぶ賛成派=16日、トルコの首都アンカラ)

政教分離と世俗主義

 地図を見てください。アジアの西端にあるトルコは、北西部でギリシャ、ブルガリアという欧州と接していて、「欧州とアジアの懸け橋」とも呼ばれます。14世紀から栄えたオスマン帝国は、西アジアから東ヨーロッパ、北アフリカにまたがるイスラム教の大帝国を築きましたが、1923年にトルコ共和国になったとき、ほぼ今の領土になりました。民族はトルコ人が中心ですが、南東部に住む少数民族クルド人が分離・独立運動を続けています。国民の圧倒的多数がイスラム教スンニ派ですが、「建国の父」ケマル・アタチュルクはイスラム教を基盤とすることが後進性の原因と考え、厳格な政教分離で公の場から宗教色を排除する「世俗主義」を国是としてきました。政治制度は日本と同じ議院内閣制で、大統領は「象徴」でした。

大統領に権限集中

 そんなトルコを大きく変えようとしているのが、今のエルドアン大統領です。親イスラム政党・公正発展党(AKP)を設立し、2003年に首相になってから、高い経済成長を実現し、低所得層向けの福祉政策やインフラ整備の充実をはかって国民の支持を得ました。2014年には、初の直接選挙となった大統領選で当選。経済が悪化しテロが相次ぐ中、強い指導者のもとで意志決定を素早くして治安や経済を安定させるためだとして、行政権を集中させる「実権型大統領制」に変える憲法改正案を国民投票にかけたわけです。結果は、わずかな差で賛成が過半数を占めました。2019年の大統領選からのように制度が変わる予定です。

言論・報道の自由を制限

 一方で、今回の改正は「民主主義の基盤である三権分立を崩壊させ、独裁につながる」と心配もされています。エルドアン氏は大統領になってから言論・報道の自由を制限するなど独裁傾向を強めてきました。昨年夏には軍の一部によるクーデター未遂事件があり、非常事態宣言を出しました。以来、事件への関与を疑われて10万人以上が拘束され、150以上の新聞社、放送局など報道機関が閉鎖、200人以上の記者が逮捕されました。野党の有力議員も拘束されています。

 そんな状況での国民投票について、欧州連合(EU)は「国際基準からみて自由で公正とは言い難い」と批判しています。反対意見を言う文化人や知識人の多くは拘束され、批判的なメディアは閉鎖されていたからです。
(写真は、改憲賛成派の勝利宣言をし支持者の声援に応えるトルコのエルドアン大統領=16日、トルコ・イスタンブール)

シリア難民300万人

 ただ、EUにはトルコと強く対立するわけにはいかない事情があります。トルコには、隣国シリアの難民が300万人近くいて、欧州への流入を抑えているからです。トルコとEUは昨年、難民や移民が欧州に不法に渡るのをトルコが抑える代わりに、EUが財政支援することで合意しました。協定が破綻して難民が流入したら、欧州は大変なことになります。

 各国との関係も、のように複雑です。

 

親日国

 トルコは「親日国」としても知られています。明治時代、台風のため和歌山県沖で遭難したトルコの軍艦エルトゥールル号の乗組員を住民総出で救助し、生存者を日本の軍艦でトルコに送り届けたのがきっかけです。1985年のイラン・イラク戦争が始まったときには、トルコがイランの首都テヘランに救援機を飛ばして、残された日本人を救出してくれました。その経緯は2015年に日本・トルコ合作映画「海難1890」でも描かれましたが、トルコでは当時の日本人の手厚い対応を今でも学校で教えているといいます。安倍首相とエルドアン大統領の個人的な関係も良好です(写真は、2015年10月8日の共同記者発表=首相官邸)。

 いまや中東屈指の経済大国でもある「親日国」の情勢は、日本の企業の関心事でもあります。今後の行方に注目してください。

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