2017年02月17日

早帰りの「プレミアムフライデー」 背景は?定着する?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「プレミアムフライデー」(PF)が2月24日に始まります。月末の金曜日に仕事を午後3時に終えて「働き方改革」を進めつつ、消費拡大にもつなげる官民の取り組みです。アメリカの年末商戦「ブラックフライデー」を参考に、経済産業省と経団連が中心になって構想を練りました。かつて「ハナキン(花の金曜日)」という言葉がはやりましたが、働く人にとっては大手を振って「ハナキン」を楽しめることになります。ただ、やらなければいけない仕事が減るわけではなく、いつも通りに遅くまで仕事をする人もかなりいるのではないかと見られています。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、経済面(11面)の「プレミアムフライデー/早帰り 本当に増える?/来週スタート/有休呼びかけ・午後3時退社促す」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

女性や高齢者も働きやすい職場に

 長時間労働が問題になっています。健康によくないというだけではありません。生産年齢人口が減っている日本では、女性や高齢者にも働いてもらうことが必要です。しかし、出産や子育てのある女性や体力の衰えている高齢者は、長時間労働の職場ではなかなか働けません。働く人を増やすためにも、長時間労働を減らしていかないといけません。また、諸外国と比べても日本の労働生産性(働いて生み出す時間あたりの付加価値)は低く、労働者1人当たりに換算するとOECD加盟35カ国中で22位(2015年)というデータが出ています。つまり、日本人はだらだらと長時間働いているというわけです。

官民が呼びかけるムーブメント

 そこで安倍政権は「働き方改革」に取り組んでいます。残業時間の制限など法律改正の必要なものは、現在、政労使で話し合っています。プレミアムフライデーは法律改正の必要な新制度ではなく、官民で呼びかけてムーブメントを起こそうというもの。以前から多くの会社が実施している水曜日の「ノー残業デー」や、国家公務員を対象に夏の間だけ就業時間を1~2時間前倒しする「ゆう活」などと似ています。ただ、午後3時で退社というのは、「ノー残業デー」や「ゆう活」よりずっと早い退社になり、使い勝手はかなりよさそうです。
(写真は、官邸が設置した「働き方改革実現会議」の様子です)

仕事量が減るわけではない

 金曜日夕方出発の旅行や、夕方からスポーツ、レジャー、買い物などを楽しみ食事になだれ込むといった使い方が考えられます。利用者や業界には期待が広がりますが、「それほど多くの人は利用しないのではないか」という声もあります。もともと、プレミアムフライデーを採用すると表明している会社は数%にすぎません。加えて、午後3時退社は、会社が労働時間をプレゼントしてくれるわけではありません。基本的に有給休暇を使うか、その分給料が減るということになります。また、やらなければならない仕事量は変わらないわけですから、金曜日に早く退社する分は別の日に消化しないといけません。「そういうことならいつも通りのスケジュールで仕事をした方がいい」という人もいるはずです。
(写真は、プレミアムフライデーを控え、ビール会社が主催したイベントの様子です)

旗振るだけで定着するか

 1980年代までは、ほとんどの企業、官庁、学校で土曜日はお昼で終わりでした。昔は正午の合図に大砲を「ドン」と撃っていたので、お昼で帰る土曜日を「半ドン」と言っていました。これを今のように土曜日もまるまる休みの週休2日制にしたのは、会社によって早い遅いはありますが、1990年前後です。もちろん、会社は就業規則や給与制度などを変えて対応し、週休2日制は今も定着しています。プレミアムフライデーは、こうした制度変更なく運用でやろうとしているわけですから、定着するかどうかわかりません。旗振り役がいなくなれば、いつの間にか「そんな言葉も昔あったな」ということになるかもしれません。みなさんが就職したときに、プレミアムフライデーがまだあることを祈っております。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別