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2017年02月16日

イスラエルの首都はどこ?中東情勢・歴史を知ろう

テーマ:国際

ニュースのポイント

 トランプ米大統領のイスラエル寄りの外交姿勢が世界に波紋を広げています。トランプ氏は大統領選中から、エルサレムをイスラエルの首都と認めて米国大使館を移すと公言してきました。でも、本当に移転したら、中東和平の枠組みが崩れて大変なことになりそうです。いったいどういうことでしょう? 中東情勢は世界の政治・経済を揺るがします。今日の記事をもとに、日々のニュースに出てくる中東情勢や歴史について勉強しましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、国際面(13面)の「親イスラエル トランプ流の波紋/両首脳が会談/『エルサレム大使館』アラブ反発」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、米ホワイトハウスで15日、共同会見をするトランプ米大統領=右=とイスラエルのネタニヤフ首相)

国際社会は認めず

 イスラエルの首都はどこか知っていますか? 「エルサレム」と答える人が多いかもしれませんが、実は単純ではありません。イスラエルはエルサレムを首都と宣言し首相官邸や国会など首都機能もここにあります。ただ、日本外務省のホームページを見ると、首都の欄に「エルサレム」とあるものの、「日本を含め国際的には認められていない」と注釈がついています。日米を含む多くの国は、地中海岸の商業都市テルアビブに大使館を置いています。

3宗教の聖地

 今日の記事から歴史をひもときます。ユダヤ人にとってエルサレムは、旧約聖書にあるダビデ王時代の王国の首都だった特別な場所です。その後、ユダヤ人はパレスチナの地から各地に散らばりますが、欧州などで迫害され、20世紀になってエルサレムに戻る運動が本格化。国連は1947年にパレスチナにユダヤ国家とパレスチナ国家を樹立する「パレスチナ分割決議」を採択し、エルサレムは「国際管理都市」とされます。翌1948年にイスラエルが建国され、パレスチナ難民が生まれました。これを機に起きた4次にわたる中東戦争の間に、イスラエルが西エルサレム、東エルサレムを順次支配し、1967年に全域を「首都」と宣言しました。

中東和平交渉が崩壊?

 多様な歴史を刻んできたエルサレムは、ユダヤ人だけの特別な場所ではありません。地図にあるように、ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」、イスラム教の預言者ムハンマドが昇天したとされる「岩のドーム」、キリストの墓とされる場所に建てられた「聖墳墓教会」などが狭い地域に密集しています。3宗教の聖地ですが、とりわけイスラム教徒にとっては絶対に譲れない場所で、パレスチナ側は東エルサレムを将来の首都とする方針です。だから、国際社会は「エルサレムの地位はイスラエルとパレスチナの和平交渉で決めるべきだ」という立場をとっているわけです。

 そんな中で米国がエルサレムを首都と認めて大使館を移せば、イスラム教徒の心情を逆なでします。米国と親しいヨルダンですら、政府高官が「超えてはならない一線。イスラム教徒の多い国やアラブ諸国の路上を燃え上がらせる」と警告しています。イスラエルとパレスチナ国家の「2国家共存」を目指すとした1993年のオスロ合意以降の中東和平の枠組みが崩壊しかねないと心配されているのです。

イバンカさんの夫がカギ?

 トランプ氏は15日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談前の共同記者会見で、「2国家共存」には必ずしもこだわらず、両当事者が交渉で解決すべきだとの考えを示しました。歴代の米政権は「2国家共存」が唯一の解決策としてきただけに、方針転換を示す発言にパレスチナ側の反発は必至です。エルサレムへの米大使館移転についても「見てみたい。細心の注意を払って検討している」と意欲を示しました。

 トランプ氏の中東政策のカギを握ると言われているのが、長女イバンカ氏=写真右=の夫でホワイトハウス上級顧問のジャレッド・クシュナー氏(36)=写真左=です。敬虔(けいけん)なユダヤ教徒で、子どものころからネタニヤフ首相とも親交があります。

 中東なんて遠い地域のことだし……と、ひとごとと思っている人もいるでしょう。でも、中東情勢はエネルギー価格に大きく影響します。世界経済、ひいてはみなさんの就職戦線をも直撃します。トランプ氏、クシュナー氏らの言動に注目してください。

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