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2017年02月15日

東芝の苦境なぜ? どうなる巨大企業

テーマ:経済

ニュースのポイント

 東芝が米国での原子力事業で巨額の損失を計上し、苦境が深まっています。日本を代表する名門企業がなぜこんな事態に陥ったのか。東芝の現状からは、電機業界、原子力事業の構造が見えてきます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面トップの「東芝、半導体の過半売却も/社長表明/原子力損失7125億円」、総合面(3面)の「原発事業 誤算の連続/東芝 建設コスト想定外」、経済面(7面)の「東芝 描けぬ将来像/社長ら会見/戦略、核心触れず」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、14日の記者会見で頭を下げる綱川智社長=右)

原子力事業がネックに

 東芝では2015年に不正会計問題が発覚。大幅なリストラや、もうかっていた医療機器会社をキヤノンに売却するなどして乗り切ろうとしてきました。ところが、昨年の暮れになって、米原子力事業で巨額の損失が出ることが新たに発覚しました。まさに「泣きっ面に蜂」の状況です。

 東芝の不正会計問題については、「東芝不正 これからの対応策に注目」(2015年7月21日)、「東芝不正会計で考える『コーポレートガバナンス』って?」(同7月22日)、「日立と東芝の明暗なぜ?ライバルを比べよう」(同8月19日)、「『東芝の大リストラ』で電機業界を知ろう」(同12月22日)を読んでください。

 今回の概略はこうです。東芝は柱の一つである原子力事業を強化するために、2006年に米国の大手原発メーカー、ウェスチングハウス(WH)を約6000億円で買収しました。国内の電機メーカーとしては異例の規模の買収で、原発事業で世界トップに躍り出ます。しかし、2011年の福島第一原発事故の後、国内での原発新設はなく、自然エネルギーの普及や原油価格の低迷もあり、世界でも原発事業への逆風が強まりました。そんな中でWHは2015年に米国で原発工事を手がける会社を買収して、原子炉設計から燃料製造、建設まで一貫して担う体制を整えたのですが、これが裏目に出ます。米国の原発4基の建設工事費用が当初の想定から大幅に膨らみ、7000億円超の巨額損失を計上することになったのです。

社会インフラ事業を軸に

 東芝はこの危機にどう対処するのでしょうか。図を見てください。東芝の事業は、白物家電の子会社や医療機器事業はすでに売却済みですから、残る柱はインフラ、原発エネルギー、半導体です。このうち、好調な「虎の子」である半導体事業を分社化し、新会社の株式の半分以上を売って当面の資金を確保することを検討しています。原子力事業については、社長直轄の組織としてリスク管理を徹底して立て直す方針です。国内では原発の再稼働や廃炉の事業を続ける一方、海外では設計や原子炉の製造などに専念して、原発の建設工事からは撤退する方向です。

 半導体事業を売って、原子力事業を縮小すると、残るのはインフラ事業です。綱川智社長は14日の記者会見で、水処理プラント、鉄道、エレベーターなどの社会インフラ事業を「中心にやっていく」と述べ、「大きな骨格は変わらない。社会インフラ事業の比重を高め、技術で社会に貢献する。質も量も増やしたい」と語りました。

東芝の採用は?

 不正会計問題後、リストラの一環として2017年4月入社の大卒・大学院卒の新卒採用は見送った東芝ですが、2018年4月入社の採用については事務系・技術系ともに再開すると、昨年10月に発表しました。技術の承継など将来のための人材確保が必要と判断したためです。

 今は苦境にありますが、日本の経済を支えてきた名門企業ですから志望する人も多いと思います。ただし、東芝はかつての「家電メーカー」ではありません。「社会インフラ事業」がキーワードになりそうです。今後の最新ニュースをこまめにチェックする必要があります。同じように、今厳しい状況にある企業を受ける人は、「なぜ今、あえてこの会社なのか」をしっかり語れるように企業研究を深めてください。

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