今日の朝刊 朝日新聞の木之本・あさがくナビ編集長が毎日の朝刊から注目記事をピックアップ! 略歴

2017年02月10日

偽ニュースにだまされるな!ファクトチェック始まる

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 偽ニュース(フェイクニュース)が問題になっています。アメリカ大統領選挙中、たとえば、「2013年、ヒラリー・クリントンは言った。『ドナルド・トランプのような人の出馬を望む。正直で買収されることがないからだ』」という情報がSNSで拡散しました。これはまったくのウソの情報でした。こうした偽ニュースがいくつも出回り、大統領選挙の結果に影響を与えたと言われています。その後も、アメリカではトランプ大統領の言うことには虚偽が含まれているとして、メディアと大統領側の論争になっています。偽ニュースをなくすための取り組みとして「ファクトチェック」が有効だと言われます。メディアが実際に事実かどうか検証するのです。朝日新聞もそうしたコーナーを設けて、政治家の発言を検証することにしました。就活生のみなさんも偽ニュースにだまされないようにしてください。面接で偽ニュースに基づいた発言をしたりすれば、「You’re fired!(クビだ!)」と言われるかもしれません。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、1面の「ファクトチェック 政治家発言点検します」と、総合面(4面)の「ファクトチェック 言い過ぎ…高地のハマグリ 漁獲400キロだけ」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

SNSが拡散する偽ニュース

 偽ニュースがこれだけ大きな問題となっているのは、SNSの普及と関係しています。フェイスブックやツイッターでは、情報源の表記のない、あるいは聞いたことのない情報源の「ニュースらしきもの」が拡散されています。インパクトのある「ニュースらしきもの」なら、拡散力は強くなります。ニュースのポイントで例示した「ヒラリーの発言」は48万人が共有しました。他にも「ローマ法王がトランプ氏を支持した」という偽ニュースは100万人に、「ペンス副大統領候補がミシェル・オバマ大統領夫人を『例を見ない品のないファーストレディだ』と言った」という偽ニュースは90万人が共有しました。こうして拡散した「ニュースらしきもの」を内容にかかわらず信じてしまう人はいます。この「ニュースらしきもの」を自由に作ることができるなら、人や組織の評判を上げることも下げることもできることになります。
(写真は、米大統領選中のヒラリー・クリントン氏)

偽ニュースを作って金儲け

 実は、こうした偽ニュースを掲載するサイトがありました。それもアメリカから遠く離れたマケドニアで作られていました。ある若者がクリック数を稼いで広告収入を得ようと偽ニュースをせっせと作っていたのです。このサイトの「ニュースらしきもの」の一部がアメリカ人のSNSに出回っていたのです。こうしたはっきりした偽ニュースサイトは、すぐに消えることが多いのですが、アメリカ国内にも日本にもあります。はっきりした偽ニュースサイトとは言えなくても、特定の考えの人たちにあわせて、あえて誤解を招くような表現や編集がされているサイトもあちこちにあります。

正確な情報が民主主義の基盤

 さらにトランプ大統領の発言やツイッターでの内容などにも事実と違う内容が混ざっていることがあります。大統領就任式に集まった群衆の数は、メディアの報道が間違いだと言い張りました。民主主義の基盤は正確な情報です。有権者が正確な情報を得た上で、議員や大統領を選ぶから成り立つのです。間違った情報を信じ込んで選んだのでは、正当な代表とは言えません。ということで、SNS時代の民主主義には、流れている情報・ニュースが事実かどうかのチェックが必要になるわけです。
(写真は、トランプ大統領の就任式)

安倍首相の演説は言い過ぎ

 朝日新聞では早速、安倍首相が1月20日の施政方針演説で語った「高知のハマグリ」の話をチェックしています。「兼山のハマグリは、土佐の海に定着しました。そして350年の時を経た今も、高知の人々に大きな恵みをもたらしている」というくだりを「言い過ぎ」とチェックしています。江戸から土佐(高知)にハマグリを持ち帰った土佐藩の家臣の野中兼山が、「これは子孫に送るのだ」と言って、すべて海に投げ入れたという逸話があります。ただ、これが「今も高知の人々に大きな恵みをもたらしている」というのは、明らかな言い過ぎ。今、高知県でとれるハマグリは年間60万円相当しかないのだそうです。とても大きな恵みとは言えません。
(写真は、1面記事でファクトチェックした安倍首相の国会答弁)

リテラシーは社会人に必須

 SNSの普及を止めるわけにはいかない今、新聞などマスメディアのファクトチェックは今後ますます重要になってくるでしょう。ただ、一人の個人でも最低限のファクトチェックはできます。自分に届いたニュースをそのまま鵜呑みにするのではなく、別のメディアでも確認するという習慣をつければ、かなりの偽ニュースを排除することができるでしょう。あるいは、新聞など長い歴史の中で信頼を得ているメディアの情報かどうか、をチェックするだけでもだまされることは少なくなるでしょう。ニュースを見分ける力を「メディアリテラシー」とか「情報リテラシー」とかいいます。今や、社会人として身につけておかなければならない力です。

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